「端的」とは
「端的(たんてき)」は形容動詞で、以下のような意味があります。
- 遠まわしを避けて、はっきりとしているさま。明白。
- まのあたりに起こるさま。即座。その瞬間。
- 手っ取り早く要点だけをとらえるさま。
なお、「端的」は仏教においては「正しいこと。真実。物の本質」を指す名詞です。ここでは、一般的に用いられる形容動詞の1~3の意味の「端的」について見ていきましょう。
「端的」の字義
「端」は音読みで「タン」、訓読みで「はし・は・はた」と読みます。「端」の字義は、①ただしい・きちんとしている。②はし・すえ・はた・へり。③はじめ・糸口・きっかけ。④ことがら。⑤半端・はした。⑥織物の長さの単位。などです。
一方、「的」の音読みは「テキ」、訓読みは「まと・あき-らか」です。「的」には、①まと・めあて・ねらい。②あたる・要点をつく・たしか・あきらか。③(名詞などについて)そのような性質や状態や傾向であることを表す、といった意味があります。
「端的」は、「端」の①、「的」の①②の字義からできています。しかし、ここからは「端的」の2の意味が読み取れません。2の意味は、1の意味の「遠回しを避けて要点や結論に至る」ことが「手間や時間を掛けないこと」と捉えられたところから派生したと考えられます。
「端的」の使い方
1の意味「明白」
ある事象から物事が明らかになっている、または、回り道をせずに物事の核心を突いているような場合に使うのが1の意味です。例えば、「表情から容易に察せられる」「データを見れば一目瞭然」のような様子を表します。
【例文】
- 彼が、彼女に気があることは、日ごろの素振り(そぶり)が端的に示している。
- 高齢者が自分の親や配偶者を殺すといった事件は、老々介護のような高齢社会の問題を端的に表している。
- 彼女は今度の人事異動に対する不満を端的に態度に出した。
2の意味「即座」
2の意味は、投薬や施策などによる効果、思考や検討から導く結果といったものが、すぐに明らかになる場合に用いられます。
【例文】
- この治療薬が、今度の感染症に端的な効果を表していることがこれまでの治験によって明らかになった。
- これは端的に答えを出せるような問題ではない。
3の意味「要点だけをとらえる」
3の意味でよく使われるのは、冒頭で例に挙げた「(要点を)端的に言う」「(結論を)端的に説明する」といった言い回しです。
【例文】
「端的」の類語
「率直/卒直」
「率直/卒直(そっちょく)」は、隠したり、飾ったりすることなく、ありのままの様子のことです。「端的」の1の意味にと言えます。また、「率直に言う」という言い回しは、3の「端的に言う」にも似ています。
【例文】
- 彼女は思いきって上司に率直な質問をぶつけた。
- この絵は、数億円で落札されたものだというが、率直に言ってそんな価値があるとは思えない。
「単刀直入」
「単刀直入(たんとうちょくにゅう)」の元来の意味は、刀を持って一人で敵陣に切り込むことです。転じて、前置きなどを省いて、すぐに要点や本題に入ること、または、遠回しを避けて問題点を検討することを言うようになりました。
【例文】
- 単刀直入に質問しますが、あなたは昨夜11時ごろ、どこで何をされていましたか。
- 君たち夫婦が不仲なのは、単刀直入に言って君の行動に原因あるんじゃないのか。
「ざっくばらん」
「ざっくばらん」は、遠慮がなくて隠し事をしないさま、気取った様子がないさまのことです。遠慮がない、気取らないという点は、遠まわしでないという「端的」の意味1に通じるところがあります。
「ざっくばらん」の語源で有力なのは江戸時代の川柳とされています。心の殻をざっくり割って、ばらりと明らかにすることを「ざっくりばらり」と言うようになり、それが「ざっくばらん」に変化したというものです。
また、明治時代の文献には、「ざっくばらり」「ざっくばら」「ざっくばれん」という言葉も見られます。
【例文】
- ざっくばらんに言うけど、まだ僕たちのチームワークは十分じゃないよ。
- 彼女の両親に紹介すると言われて緊張したけど、会ってみるとざっくばらんな両親だったのでホッとした。