「本質」の辞書的意味
「本質」という言葉には、たくさんの意味が込められています。第一に、「ある物をその物として成り立たせているそれ独自の性質」という意味です。難解な意味ですが、例えば動物を動物としてたらしめている性質、つまり人間の本質であれば「多彩な感情」などが該当します。
第二に、「常に変化する現象的存在に対して、その背後または内奥に潜む常に変化しないもの(恒常的なもの)」という意味です。この場合は「実体」として、形而上学的な存在として解されることが多いです。この対義語として「現象」という言葉が当てはまります。
「本質」の哲学的意味
「本質」という言葉は主に哲学的研究の中で用いられます。例えば、古代ギリシアの哲学者プラトンが用いた「イデア」という言葉。プラトンは事物の本質を「イデア」と呼び、「理性によってのみ認識されうる存在」という意味を付けています。
また、プラトンの弟子アリストテレスは、師匠であるプラトンの用いた「イデア」を批判し「形相(エイドス)」という言葉を用いました。「イデア」も「エイドス」もほとんど意味的には変わりがないですが、これらの言葉は後の西洋哲学の基礎となっていきます。
「本質」の言葉の由来
「本質」という言葉自体の由来は、英語にあります。"essence"という単語です。この言葉は日常生活でもよく聞く単語ですが、「存在(ess)し続けるもの(ence)」という原義を持ち、そこから派生して「本質、真髄、最も重要な部分」という意味を持つようになりました。
また、"essence"は料理などの場面でも用います。香り付けに用いられる用語で、日本語の「本質」という言葉の示す「ある物をその物として成り立たせている独自の性質」という意味が込められています。「バニラエッセンス」という言葉が一番有名でしょう。
「本質」を表す他の英単語
「本質」という意味を示す単語は他にもあります。"nature"という単語です。「生まれつき(nat)持っているもの(ure)」という原義を持ち、日本語的にはそこから派生して"この世界に元から存在するもの"という意味で「自然、自然界、自然力、自然現象、造物主」と訳すことが多くなりました。
しかし、"essence"と同様に「性質、本性、本質、特質」という意味を持つこともあり、そこから派生して「(人・物・場所の)ありのままの自然な姿、実物」という意味をも持つようになりました。日本では「自然」と訳されることの多い"nature"ですが、「本質」という意味も表すのです。
「本質」の類語・対義語
「本質」の類語として挙げれられる言葉は、人間的なもので言えば「性質、キャラクター、人格」であったり、人間に限らず言えば「天生、天性、資質」、最も重要な部分という意味として言えば「主意、中枢、核、真髄」といったものです。
また、「本質」の対義語は「現象」という言葉です。「現象」は哲学的にも本質の対義語として扱われており、「観察されうるあらゆる事実」や「本質の外面的な表れ」といった意味を持ちます。特に「自然や生理の作用によっておこる非人為的な物事」と捉えることが多いです。
「本質」を用いる言葉
「本質」という言葉は、様々な言葉とともに使われています。よく使われるものは例えば「本質的な○○」などの「本質的」という言葉でしょう。「本質的な問題」や「本質的に異なる物質」「本質的価値」といったように用いられます。
また、哲学的には「本質主義」という言葉も存在します。「本質」を哲学的に捉えている前記のような考え方をまとめた言葉です。英語で表すと"essentialism"となり、「様々な事象は実は歴史的・社会的に構築されたものとする立場」である構築主義"constructionism"の反対語となります。