「観察」とは?
「観察」は、(かんさつ)と読みます。堅苦しい響きですが、誰もに馴染み深いのは、小学生のころから、理科の時間で頻繁に用いられる言葉だからかもしれません。
「観察」は、もともとは仏教の用語です。この場合は(かんざつ)とも読み、智慧によって対象を正しく見極めることを意味します。
一般的には、次のような意味で用いられます。物事の状態や様相、またその変化などを客観的に注意深く見ること。物事をありのままに詳しく見極めて、その状態を知ること。現象を自然の状態のまま注意深く見て、推察したり客観的な知識を得ること。
「観」「察」の字義
「観察」における「観」は、見る、くわしく見る、眺めるという意味で用いられています。「察」の意味は、明らか、明らかにする、よく見る、くわしく調べる、知るです。
「観察」の意味に、たんにくわしく見るだけでなく、推察や知識を得るという意味が含まれるのは、「察」に「知る」という意味があるからと言えましょう。
「観察」の使い方
「観察」という言葉を使う上での大きなポイントのひとつは、「観察」する対象に決して人為的な作用を施してはいけないということです。
「理科」の時間では、「観察」とともに「実験」が大きな学習の要でした。「実験」は、対象にさまざまな働きかけをします。薬剤を入れたり、アルコールランプで温めたりもしましたね。「観察」は、あるがままの状態をよく見ることに意味があるのです。
また、「観察」は、一瞬で終わるものではありません。状態をその場で確認するのは目撃、目視に近く、「観察」とは言えません。ある程度の時間をかけて、対象の変化を見極めること、基本的には、そこから客観的な知識や推察を得るまでの流れを含むのが「観察」です。
「観察」の文例
- 星空の観察で夜遅くまで起きていたので、今日はとても眠い。
- 就活の会社訪問では、人事の社員に一挙手一投足を観察されているようで緊張する。
- 地元の町を活性化させたくて、このごろは商店街の人の流れなどを観察している。
「観察」を使った言葉
経過観察(けいかかんさつ):医師がよく口にするのがこの言葉です。基本的な意味は、状態や変化を定期的に確認することですが、病気をした場合の手術、治療のあとに、予後をチェックするために定期診察を行う意味で使われることが多い言い回しです。
保護観察(ほごかんさつ):犯罪者に対する制度のひとつです。刑務所の仮釈放者、執行猶予者、保護処分の少年少女などが、保護司による面接や生活状況の把握というかたちで観察されながら、社会の中で更生を目指します。
観察眼:物事や状況を観察する能力を意味します。観察眼がある(ない)という使い方をします。
「観察」と「観測」
「観察」と混同されやすい言葉に「観測」があります。「観測」の意味①は、自然現象の変化などを注意深く詳しく見て測ること。天体観測、観測気球などの言葉がお馴染みですね。測る、測定するという行為が特徴です。
意味②は、物事を注視し、変わっていく状況を推測することです。「観察」よりも「推察」の意味を強く含みます。頻繁に使われる意味ではありませんが、もっとも馴染み深い言い回しに「希望的観測」が挙げられます。
「観察」の類語
「精察」
精察(せいさつ):こまかく観察、視察、考察すること。詳しく見届けること。「観察」に比べて、口語ではほとんど使われない硬い言葉です。「精」は、精密、精巧などにも用いられるように、くわしい、こまかい、という意味を持つ字です。
【文例】
刑事は、犯罪者の心理を精察する能力に長けている。
「注視」
注視(ちゅうし):注意深く、慎重にじっと見ること。「観察」よりも、意識して細かく見る集中度が高い言葉です。
【文例】
取引先に対して大きなミスをおかした部下がどのように対処するのか、その能力を注視している。
「熟視」
熟視(じゅくし):じっと見つめること、凝視すること、つくづく眺めること。「観察」「注視」よりも、さらに見る集中度の高い言葉です。会話ではまず使われることがありません。
【文例】
実家にある壺が著名な陶芸家によるものと聞いて、手に取って熟視した。