「様相」とは?
「様相」(ようそう)とは、大きく分けて次の二つの意味を持つ言葉です。
- 物事の様子、ありさま、状態、姿。
- 哲学における用語として、事物の存在のしかた。また、判断のしかたの種類(可能的、必然的、偶然的、など)のこと。
意味をより深く理解するために、「様」「相」の漢字の意味をそれぞれに検証してみましょう。
「様」は、音読みが(よう)、訓読みが(さま)。複数の意味がありますが、「様相」では「さま、かたち、ありさま」の意味で用いられています。
「相」は、音読みが(そう・しょう)、訓読みが(あい)。こちらも複数の意味をもつ漢字ですが、「様相」における「相」が表すのは、「表面にあらわれたかたち、姿、ありさま」という意味です。
「様」「相」ともに、かたちやありさまを指す漢字であり、この二つが重なっている「様相」は、一般的意味においては、事物の外形的な姿やありさま、外側から見たかたち、を表しています。
「様相」の使い方
「様相」の一般的な使い方と哲学用語としての使い方を、それぞれ項目別に挙げていきます。
「様相」(一般用語)の使い方
「様相」は文語表現として、公式文書や論文などで多く用いられる言葉です。日常会話で用いるには、少々堅苦しい印象を持ちます。そのような言葉にままあることですが、そのニュアンスをあえてユーモアとして用いられる場合もある言い回しです。
会話や文章の中で用いる場合、「様相」には、定型的な言い回しがいくつか存在します。代表的な例を挙げてみましょう。
- 様相を呈する
- 様相を見せる
- 様相を帯びる
- 様相を異にする
「様相」(一般用語)の文例
- 難民キャンプの食糧事情は窮乏し、人々の栄養不良は深刻な様相を呈している。
- 「くまモンチームとふなっしーチームの玉入れ競争、小競り合いの様相を見せてきたぜ!」
- 火山の爆発で地元の温泉街には灰が積もり、ゴーストタウンの様相を帯びてきた。
- 同じ街ながら、開発が進んだA地域と取り残されたB地域は、生活環境の様相を異にしている。
「様相」(哲学用語)の使い方と文例
哲学における「様相」の意味は、前述の通りですが、学派によって細かな定義・使われ方は異なります。ここでは、カント哲学における「様相」の意味の紹介を兼ねて、用語としての「様相」をとりいれた使い方の文例を挙げてみましょう。
【文例】カント哲学における「様相」は、判断における思惟機能を指す。現実的(実際にそのまま在ること)、可能的(やがてはそのようになり得る可能性を持つこと)、必然的(それ以外ではあり得ないこと)の三種類がその代表例である。
「様相」の類語
「有り様」の意味と使い方
「有り様(ありさま)」とは、次の二つの意味をもつ言葉です。現代では、2の意味ではほとんど使われていません。
- 様子、物事の状態やありよう。
- 人の身分、境遇、置かれている状態。
【文例①】猛暑のなか旅行から帰宅すると、花壇の草花は水枯れでしおれ、悲惨な有り様だった。
【文例②】依存していた恋人から別れを告げられた優子は、重病人のような有り様で引きこもっている。
【文例③】数ならぬ有様なめれば、必ず人笑へに憂きこと出で来むものぞ。(源氏物語・宿木)
「動静」の意味と使い方
「動静(どうせい)」とは、大きく分けて次の二つの意味をもつ言葉です。
- 物事の有り様、様子、動きや推移。
- 人の行動の有り様。
2の意味では、日々公表される「首相動静」がお馴染みですね。「様相」の類語としては1の意味が当てはまります。
【文例】A社とB社は、収益のよい部門を生かし合った提携を模索しており、双方の株主は両社の動静を固唾をのんで見守っている状況だ。