「加筆」とは
「加筆(かひつ)」とは、文章や絵などを後から部分的に書き直したり、書き加えたりすることです。文章の場合は、「加筆訂正」や「加筆修正」という表現もあります。
「筆」は、筆記用具のことで、本来は筆やペンなどのことです。しかし、現代では、パソコンのワープロソフトで文章を書く人が多いので、「筆」という文字はそぐわないようにも思われますが、筆記用具の一つと考えればいいのではないでしょうか。
また、パソコンソフトを使って絵を描くこともできますが、こちらの方は、まだまだ「筆」が主役でしょう。
「加筆」の使い方
「加筆」が、最もよく使われるのは文章に携わる職業の人たちです。作家、評論家といった専門家に限らず、ビジネス文書を作成する場合にも、推敲や校閲、点検といった過程で「加筆」は行われます。
また、論文やレポート、あるいは作文などでも指導教授や先生の指摘・アドバイスなどを受けて「加筆」することがあります。文章の場合、書いた本人だけでなく、点検者が「加筆」したり、本人に「加筆」を促したりすることもあります。
「加筆」は、より良い文章や文芸作品などを作っていくために行う作業です。絵の場合でも、描いた本人が「加筆」することが普通ですが、絵画教室などで指導者が「加筆」することもあります。
「例文」
- 稟議書(りんぎしょ)の決裁を上司に上げたら、赤で加筆されてやり直しを命じられた。
- 文庫版の発行にあたり、単行本の原稿に一部加筆することにした。
- 独占インタビューの原稿に対して、本人から加筆の要請があった。
- 工房画家のルーベンスは、弟子たちが描いた絵に加筆することで大量の絵を描いた。
- 写生会で、色彩と光のバランスをとるために、先生に一部加筆してもらった。
「加筆」の同義に近い言葉や類語
「補筆」
「補筆(ほひつ)」は、足りない部分を後から書き加えることです。文章にも絵にも使え、「加筆」と同じように使うことができます。
【例文】
- この作品は、画家が何年もかけて補筆を繰り返して完成したものです。
- 秘書が作ったスピーチ草稿は、補筆するところがほとんどないよくできたものだった。
「助筆」
「助筆(じょひつ)」は、他人の書いた文章に手を加えてより良い文章にすることです。「助筆」は、「加筆」の類語ですが、専ら文章に使う言葉で、絵にはまず使うことがありません。
【例文】
- 初めて作成したプレゼンの企画書を先輩に助筆してもらった。
- 論文の助筆者を共著者に加えることにした。
「推敲」
「推敲(すいこう)」は、文章を作るときに表現や語句を何度も練って考えることです。「加筆」と同様、原稿や原案を元にいろいろ考えてより良いものにしようとするために「推敲」を行います。
「推敲」は、唐の詩人が詩に用いる語句を「推(おす)」にするか「敲(たたく)」するかと迷っていたところ、著名な文豪の助言を得て、「敲」に決めたという故事に由来します。
【例文】
- 回顧展で展示されていた作家の原稿を見ると推敲の跡が随所に見られた。
- 卒業論文の推敲をしていて、気が付くと朝だった。
「添削」
「添削(てんさく)」は、他人の書いた文章や答案に語句を書き加えたり(添えたり)、削ったりして直すことです。「推敲」は、本人が行う行為ですが、「添削」は、原則として本人以外の者が行います。
【例文】
- 答案の添削をしていて、問題文の間違いに気が付いた。
- 一人暮らしの近況を手紙に書いて実家に送ったら、国語教師の父から漢字の間違いを添削されて送り返されてきた。
「改竄」
「改竄(かいざん)」も、文章などの内容を書き直すことですが、自己に都合の良いように直すことから、不正なことに使われる言葉です。
「竄」という漢字は、鼠(ねずみ)が、狭い穴に潜り込むことを表しており、そこから、「他人の文章に自分の文章を紛れ込ませる→書き換える」という意味を持ちます。なお、「竄」は、常用漢字ではないので、通常は平仮名表記されます。
【例文】
- ハッカーが、行政機関のセキュリティを破ってホームページを改竄するという事件があった。
- 帳簿の改竄が発覚して、経理担当者が解雇された。