「推敲」とは?意味や使い方をご紹介

「ちょっとキミ、これ推敲して!」なんて突然上司や先生から言われたら、みなさんはどうしますか?本記事では今さら聞けない推敲の意味や使い方、校正との明確な違いなどを、推敲という言葉の成り立ちを踏まえつつわかりやすくご紹介します。

目次

  1. 「推敲」の意味と読み方
  2. 「推敲」の使用例
  3. 「推敲」の故事成語
  4. 「推敲」の教訓
  5. 「推敲」と「校正」の違い

「推敲」の意味と読み方

みなさんは推敲という言葉を聞いたことがありますか?推敲と書いて「すいこう」と読みます。辞書を開くと、推敲の項には「詩文を作るのに字句をさまざまに考え練ること」と記載されています。

平たく言うと、文章を作成する際に「どちらの単語を使おうか」とか「ここは漢字よりひらがながいいかな」などと、完成品がよりよいものとなるよう考えを巡らせることですね。

「推敲」の使用例

推敲は名詞ですが、語尾に「する」をつけることで動詞に変わります。例えば「書き終わった文章を推敲する」などといった使い方ができます。

注意すべきは、「推敲」があくまで文章に対する動作である点です。推敲の意味が「完成品の質を上げるためにブラッシュアップすること」だからといって「料理の味付けを推敲する」という使用法は誤りです。「推敲」が使えるのは文章に対してのみであることを覚えておきましょう。

「推敲」の故事成語

h.romi_さんの投稿
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推敲という言葉にはこんな故事があります。唐の時代の中国に賈島(かとう)という人がいました。その当時の中国では、役人の職に就くためには科挙という試験を受けなければならかったので、賈島も首都・長安へ科挙のためにはるばるやってたのです。ロバに乗りながら詩を作っていると、「僧推月下門(僧は推す月下の門)」という句ができました。

ところが、よく考えてみると“推す(おす)”ではなく“敲く(たたく)”の方がいいような気もしてきます。実際に門を推したり敲いたりする仕草をしてみたものの、どちらがいいか決まりません。思案しているうちに、いつの間にか賈島は都の長官・韓愈(かんゆ)の行列に割り込んでしまっていました。

長官の行列を乱したことについて咎められた賈島は、これまでの経緯を説明します。すると韓愈は「それは敲くの方がよいだろう」とアドバイスしてくれました。彼は都の長官であると同時に、名文家でもあったのです。そのまま賈島と韓愈は、並んで騎乗したまましばらく詩について論じ合いました。

「推敲」の教訓

推敲の故事は辞書などでは比較的簡素に説明されているため、読み手によっては「推すと敲くという、どちらでもよいことについて考えを巡らせている人がいた話」と受け取ることがあるかもしれません。

例えば案じる必要のないことを心配するという意味の、杞憂という言葉がありますね。杞憂にも「杞(古代中国に存在した国)に、空が崩れ落ちてきたらどうしようと心配して食事も喉を通らなかった人がいた」という故事があります。

杞憂の場合は「する必要のない心配をした」というのが物語の本質ですが、推敲の場合は違います。実際に賈島の作った句の光景を思い浮かべてみてください。人気のない、しんと静まり返った通りで、門の前に立つ僧を月光が照らし出しています。僧が門を“敲く”と静寂と月光の中にその音が響き渡りますが、“推す”ではそうはなりません。

推すと敲くという小さな違いでも、優れた文章家は作品の質を高めるために頭を悩ますものなのです。杞憂の主人公・杞人の行動は戒めとして語られていますが、推敲の主人公賈島の行動は推奨行為として語られていることを覚えておきましょう。

「推敲」と「校正」の違い

推敲と似た言葉で「校正」というものがあります。辞書で校正を調べると「文字の誤りをくらべ正すこと」と記載されています。推敲と校正は「文章を見直して改める」という点が共通していますが、この2つの単語には明確な違いがあるのです。

推敲は完成された文章の質を上げるために字句を改めることですが、校正はそもそもの字句や文章の誤りを正すことを指しています。誤字や脱字、文法の誤りなどを訂正するのが校正なんですね。

したがって、「僧は推す」を「僧は敲く」に改めることは推敲ですが、「僧はお酢」を「僧は推す」に訂正するなら校正です。とはいえどちらの行為もとても重要ですから、みなさんも文章を作成する際にはぜひ校正と推敲をお忘れなく。

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