「救恤」とは
「救恤」は<キュウジュツ>と読みます。「困っている人を救うこと・見舞の金品などを与えること」という意味があります。救援、救済と言い換えてもいいでしょう。
「救恤金」<キュウジュツキン>は、被災した人や生活に困っている人を援助するための寄付金、つまり、義捐金<ギエンキン>のことです。
「恤」の字義
「恤」は、音読みでは<シュツ・ジュツ>、訓読みでは<あわ-れむ・うれ-える・めぐ-む>と読みます。心配する・憐れむ・(金品などを)恵むなどを表す漢字です。「救恤」においては、「恵む」という意味で用いられています。
「恤」はなかなか使う機会がない漢字ですが、この字を使う熟語には次のようなものがあります。
- 「恩恤」<オンジュツ>:情けをかけること
- 「存恤」<ソンジュツ>:憐れんでねぎらうこと
- 「優恤」<ユウジュツ>:手厚く恵んでいたわること
- 「恤兵」<ジュッペイ>:戦場の兵士に金品や物資を送って慰問することを表す熟語です。
「救恤」の使い方
- 大震災の後、政府は必死に救恤につとめた。
- 彼らによって多くの人々が救恤されたことはあまり知られていない。
- 救恤用に多くの食料や衣料などが運び込まれた。
- 救恤物資を乗せた船がようやく到着した。
「救恤」の類語
「カンパ」
「カンパ」には、政治活動や災害などの罹災者を援助するために、大衆から資金を集めること。または、そのために金を出すことという意味があります。「救恤」には、大衆に呼びかけて行うというニュアンスはありませんが、援助するという点は共通しています。
【例文】
- 社員のみんなでカンパして入院中の仲間を見舞った。
- ここの活動費はカンパによって賄われている。
「支援」
「支援」は他人に力を貸して助けることを言います。具体的には、労力や金銭を提供することですので、精神的に支えることを指す「応援」とはニュアンスが異なります。「支援」は、必ずしも困っている人を対象としませんが、「救恤」に類する言葉と言えるでしょう。
【例文】
- 彼らは長らく彼女の活動を支援してきた。
- 彼の無実を信じる支援者たちが声を上げた。
「慈善」
「慈善」とは、情けをかけること、または、貧しい人や災害などにあって困っている人を助けることという意味です。後者は「救恤」とほぼ同じ意味ですね。
【例文】
- 慈善活動に熱心な有名人は多い。
- こちらは慈善事業ではなく、商売なんですから、無償でと言われても困ります。
「拠出」
「拠出」とは、ある目的のために金銭を持ち寄ることを意味する言葉です。もともとは、目的のために金を出し合うという意味の「醵」という字を用いて「醵出」と書いていました。現在では、常用漢字で「拠出」と表記するのが一般的ですが、意味は「醵出」に由来するものです。
「拠出」は相互扶助のために金を出し合うことを言いますので、「救恤」のように恵み与えるというニュアンスはありません。ただし、その目的によっては「救恤」に近い意味になることもあるでしょう。
【例文】
- 当初はメンバーの拠出により運営されていたが、現在では協賛を得られるようになった。
- OBの拠出金によって、台風で破損した校舎を修繕することができた。
「七つの美徳」とは
キリスト教においては、罪の根源とされている7つの欲望を指して「七つの大罪」と呼んでいます。その7つとは、①色欲・②暴食・③強欲・④怠惰・⑤憤怒・⑥嫉妬・⑦傲慢です。
一方、「七つの美徳」という言葉もありますが、これは出典によって挙げられている徳が異なります。
カトリック教義の「七つの美徳」
「七つの美徳」は、カトリックの教義においては「七元徳」と呼ばれ、基本的な7つの徳を指しています。
①知恵・②勇気・③節制・④正義・⑤信仰・⑥希望・⑦愛のことで、①〜④は古代ギリシャの枢要徳、⑤〜⑦は『新約聖書』の「パウロからの手紙」に由来します。
『プシュコマキア』の「七つの美徳」
アウレリウス・プルデンティウス・クレメンスは『プシュコマキア』という寓意的な叙事詩において、「七つの美徳」が「七つの大罪」を倒す物語を描きました。
そのため、こちらの「七つの美徳」は「七つの大罪」に対応するものが挙げられています。翻訳の仕方などによって異なる場合もありますが、一説には、①純潔・②節制・③救恤・④勤勉・⑤慈悲・⑥忍耐・⑦謙譲とされているようです。
つまり、ここでは「救恤」は「強欲」に対する言葉ということですね。