「心境」とは
「心境(しんきょう)」とは「その時の心の状態。その時の気持ち。胸の中」という意味で、人間の内面や精神状態に関する言葉のひとつです。
「境」とは
「境」の原義は以下の1や2です。「心の境」(=心のありさま)、つまり「心境」の「境」は3の意味で用いられています。
- さかいめ。くぎりめ:「境界。国境」など
- 土地。場所。地域:「辺境。異境」など
- 人が置かれた状態。立場。様子。ありさま:「境遇。境地。苦境」など
- (仏教用語で)認識の対象
「心境」の使い方
「喜怒哀楽」という言葉がありますが、人の心は複雑ですから、このどれかに分類できない感情もありますよね。「心境」は心の状態を指す言葉なので、「この種類の感情」と分類できないような心持ちをも表すことができます。
「心境」の例文
- 仲の良かった幼馴染の女友達とは、進んだ大学も同じだった。しかし、彼女に恋人ができたことを知ったとき、手放しで祝福できない心境だった。
- A選手は三度目のオリンピックでようやく金メダルを手にした。受賞後のインタビューでは、長かった苦難の道を振り返りながら、現在の心境をしみじみと語った。
- 彼女は家族を交通事故で失った。加害者が刑期を終えて出てくることを知った彼女の心境は察するに余りある。
- その老人はずっと息子夫婦との同居を拒み続けていたが、友人の死に接して心境の変化があったのか、ようやく同居を受け入れた。
「心境」の類語
「境地」
「境地(きょうち)」という言葉の本来の意味は「場所。土地。環境」ですが、派生して「経験などによって得られる心のあり方」を指す場合もあります。後者は「心境」に通じる意味です。
【例文】
- 面壁九年(めんぺきくねん:ひとつのことに専念してやり遂げること)の座禅修行を経て、達磨大師は悟りの境地に達した。
- 病気が悪化し、死を目の前にした彼は、明鏡止水(めいきょうしすい:澄み切った落ち着いた心)の境地に達していた。
「胸中」
「胸中(きょうちゅう)」とは、「心の内。心の中で思っていること」です。心の中で思っていることという意味がある分、「心境」よりも、より具体的な考えや心情に対して用いられることがあります。
【例文】
- パワハラや依怙贔屓(えこひいき)が日常茶飯事の職場に対して、私の胸中は不満や怒りでいっぱいだ。
- 往来でマスクもせず、口に手も当てずに咳き込む人を見て、私は胸中で罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐いた。
「心地」
「心地(ここち)」にはいくつかの意味がありますが、「心境」に通じるのは「物事に接したときの気分や動作に伴った心の状態」という意味です。「心境」には、必ずしも物事に接する・動作といったきっかけはありませんので、その点においては異なります。
【例文】
- ショッピングモールで迷子になった我が子が見つかるまでは、生きた心地がしなかった。
- 窓を開けるとひんやりとした風が入ってきて心地よかった。
禅宗における「心境」
坐禅(ざぜん)や問答といった修行を通じて自分の内面を見つめ、心のあり方を悟ろうとする仏教の一派が禅宗です。
この禅宗において、「心=自己(主体)」と「境=自己以外の存在(客体)」という意味です。「心境一如」(しんきょういちにょ)は、主観と客観の区別がないこと、自分と万物が一体であることを表しています。