「根暗」とは
「根暗(ねくら)」とは、「根っから性格の暗いこと、またその様や人」を意味する言葉です。
ここでいう「根」とは、「根本」や「根源」といった、人の性格の深いところ、つまり表面に現れ出にくい基本的な部分を指しています。
そのため、いかにも性格が暗そうな(他人との接触を嫌いそうな)人に対してばかりではなく、表面上はフランクな人に対しても(あるいはそうした人が自虐的に)使用する場合があります。
「ネクラ」という風に、カタカナで書かれる場合もありますが、意味的な違いはありません。反対語は「根明(ネアカ)」であり、これは「根が明るいこと」を意味します。
「根暗」の由来
「根暗」という表現が広まったのは、おおむね1980年代頃のことのようです。直接の由来は、TBSラジオの『パックインミュージック』金曜日のパーソナリティーであった野沢那智と白石冬美の会話とされています。
その後、タモリが番組の中で「こう見えて私、根が暗いんです」と述べたことが流行の原因となったと言われています。
現在ではインターネット発祥のスラングで、ほぼ同じ意味となる「陰キャラ(いんきゃら)」が広まったこともあって、「根暗」は以前ほど聞かれなくなったかもしれません。そういった意味では、「根暗」はラジオやテレビ時代のスラングであると言えるかもしれません。
使用例
- あの人は付き合いのわるい根暗な人だ
- 根暗なのが悪いわけじゃない。他人に興味がないのがよくない
- 根暗なのかと思っていたら、付き合ってみないとわからない良さがあった
「根暗」の類語
陰気・辛気
「陰気(いんき)」は「気分や雰囲気などが晴れ晴れとしない様子」をあらわす言葉で、天候の他にも人の性格などに対して用いられます。
「陰気」の反対語は「陽気」であり、「陰」と「陽」という二つの気は対立するものとして捉えられています。
一方、「辛気(しんき)」は「面倒であること」や「はっきりしなくていらいらすること」であり、やはり人の性格に対して用いられることがあります。
多くの場合「辛気くさい」という形で使われますが、これは「思うようにならず、いらいらする様子、気が滅入る様子」を意味する言葉です。
憂鬱(症)
「憂鬱(ゆううつ)」は「気持ちがふさいで晴れないこと」を意味する言葉です。
「憂鬱な顔つき」のような形で人のパーソナリティをあらわすほか、「あの人は憂鬱症(的)だ」といったような使い方をします。
ここで言う「憂鬱症」とは、必ずしも「うつ病」のような病理的な意味合いではなく、人の気質(性格のタイプ)の中でも「憂鬱質(黒胆汁質)」に分類されるパーソナリティを表したものです。
「憂鬱質(黒胆汁質)」は英語で「メランコリー(melancholy)」と言いますが、「根暗」とはほとんど同じ意味と捉えてもさしつかえないでしょう。
陰キャラ
2000年前後から、性格を含めたその人のパーソナリティ(個性)を「キャラ(キャラクターの略称)」と呼ぶようになりました。
そうした風潮の中、特に学校や、学生たちが多く利用するインターネットの世界で使われるようになったのが「陰キャラ」という言葉です。
「陰キャラ」は略して「陰キャ」と使われるのも一般的ですが、対応する言葉である「陽キャラ(陽キャ)」とともに近年多用されています。ここで言う「陰キャラ(陽キャラ)」はまさに「陰気な(陽気な)キャラクター」の略語であり、意味はほぼ「根暗(根明)」に等しいものと言えるでしょう。
ただ、「陰キャ・陽キャ」という言葉は、学校内での精神的な身分制度を意味する「スクールカースト」と強く結びついています。大抵の場合、「陽キャ」はカースト上位であり学生生活を満喫している(「リア充」である)一方、「陰キャ」は劣位で目立たない、学生生活における「負け組(非リア)」の扱いを受けているようです。
しかしながら、そうした「非リア」である「陰キャ」に混じりたくないあまり、無理をして「陽キャ」ぶろうとする人(通称「キョロ充」)もいるといいます。
自分がもともと持たないパーソナリティを必死に偽装しようとするという点では、「キョロ充」も「根暗」と言えるのかもしれません。