「正論」とは?
「正論」の意味
「正論(せいろん)」とは、「道理にかなった正しい議論や主張」という意味です。ただし、昨今では、「正しいだけで何の解決ももたらさない主張だ」、「主張自体は正しいが、いま求めているのはそういう意見ではない」、「正しい意見だが、それをおまえが言うな」というニュアンスが含まれることもあります。
「正論」の使い方
本来は、「正論を吐く」、「正論だ(である)」のように使います。
- 校長は生徒に正論を吐かれてぐうの音も出なかった。
- 彼女の主張はまったくもって正論である。
そのほかも、次のような言い回しもあります。「正論」を言われる側からすると、正論はまるで剣や銃などの自分を傷つけるようなものとして捕らえられていることの表れでしょう。
- 彼はなにかにつけて正論を振りかざすが、作業はちっとも進んでいない。
- 元カノはよく正論を突きつける人だったので、嫌気がさして別れた。
また、最初に説明した通り「おまえが言うな」、「今聞きたいのはそれじゃない」というニュアンスを含むのは、例えばこのような場合です。Bさんにしてみれば、「Aさんが間違っているとは思わないけれど、その論点ではこれ以上話し合いたくない」という気持ちがこもっています。
- Aさん「ブラック企業なんてみんな潰れてしまえ」
- Bさん「正論だね。(でも…)」
「正論」の類語と対義語
「正論」の類語
「正論」の類語としては次の言葉が考えられますが、「正論」をイヤミとして用いる場合には、以下の類語で置き換えられないこともあります。
- 「名論(めいろん)」:すぐれた意見。立派な議論。
- 「高論(こうろん)」:優れた議論。 他人を敬ってその意見をいう語。
- 「卓論(たくろん)」:優れた議論。卓絶した説。
「正論」の対義語
「正論」の対義語としては、「筋の通っていない意見」という意味をもつ、次の言葉が挙げられます。
- 「曲論(きょくろん)」:道理を曲げた意見。
- 「暴論(ぼうろん)」:道理から外れた主張、乱暴な意見、または、論理性を欠く議論。
「正論」の英訳
- That's a fair argument,but I don't think that's everything.(それは正論だけど、それが全てだとは思わない。)
- You have got a point.(それは正論だね。)=「的を得ている」「一理ある」
- You are right, but ….(あなたは正しいよ、でもね…)
- You are correct, but ….(あなたの言っていることは正解ですよ、でもね…)
- I agree with you.(正論だね)=「賛成です」
「正論ハラスメント/ロジカルハラスメント」
近頃、様々なハラスメントが問題となっていますが、その中の一つに「正論ハラスメント」、「ロジカル・ハラスメント(ロジハラ)」があります。「正論ハラスメント」、「ロジハラ」とは、「正論ばかり言って相手を困らせること」を指す言葉だそうです。
私たちが暮らしていく上で、モラルやルールーなど、共通認識としての正しさは必要ですが、それだけですべて解決できるわけではないという根本的な問題を含んだハラスメントと言えます。
「正論だけでは解決できない」ことを表す諺
正論だけでは物事を解決できないのは世の常で、アメリカの建国の父として知られるベンジャミン・フランクリンは、次のような言葉を残しています。
- 原文:In order to persuade the opponent, do not bring up a legitimate opinion. All you have to do is talk about what profits the opponent has.
- 和訳:相手を説得するために、正論など持ちだしてはいけない。相手にどのような利益があるかを話すだけでいい。
また、次のような諺(ことわざ)もあります。
- 「人と屏風は直ぐには立たず(ひととびょうぶはすぐにはたたず)」→屏風が折り曲げなければ立たないように、人も正論ばかりでは世間を渡っていけない。
- 「曲がらねば世が渡られぬ」→真面目さや正義だけでは世の中は渡れないので、時には、融通を聞かせることも必要だ。
- 「水清ければ魚住まず」→水がきれいすぎると却って魚が棲まなくなるように、清廉潔白も度がすぎると人に親しまれない。
それでも、どうしても口を開かずにはいられない方に思い出していただきたい諺はこちらです。