「真偽」の意味とは
「真偽(しんぎ)」は、本当と嘘(うそ)、真実と虚偽(きょぎ)、本物と贋物(にせもの)といった意味です。そして、この三つの意味はすべて対義語の関係にあります。
ここでは、「本当・真実・本物」を表す「真」と「嘘・虚偽・贋物」を表す「偽」に分けて、「真偽」の意味を掘り下げて行きます。
「真」とは
「真」は、音読み「シン」、訓読み「ま。まこと」と読みます。「眞」の旧字「眞」は、匙(さじ)を表す「匕」と鍋や釜を表す「鼎(てい。かなえ)」の変形文字からなり、匙で鼎に物を詰めて、中が満たされた状態を表します。
このような状態から、「眞」は、満たされて欠けるところがなく充実しているという意味になり、この状態のことを、儒学では「誠(まこと)」、道教では「真」と呼んで、まこと、うそいつわりがない、充実しているということを意味しています。
ここから「真」は、本当、真実、本物、まこと、うそいつわりがない、充実しているという意味を持っています。
「偽」とは
「偽」は、音読み「ギ」、訓読み「いつわ-る。にせ」と読みます。「偽」の旧字「僞」は、人間が手で象を手なずけるさまを示すところから、作為を加えて本来の性質や姿を変えるという意味を含み、転じて、にせもの、いつわり、うそ、だます、作為といった意味を持っています。
「偽」は、「にんべん」と「為(なす)」で出来ていますから、「人のため」とも考えられますが、人が為す、つまり、人の作為によって本来の自然な姿が変えられる、人の手が加わるというところから、上記のような意味が生じています。
「真偽」の使い方
「真偽」は、物事が本当のことか偽りのことかを見極めたり、区別したりする際に使われます。宝石や美術品、人のうわさや報道された事実、容疑者として逮捕された人間が本当に罪を犯したか否かなど、「真偽」という言葉を使う場面はいたるところにあります。
「例文」
- 誕生日にもらったジュエリーがガラスじゃないかという人がいるが、真偽を確かめて彼との間に溝ができるのは嫌だな。
- アイドルと青年実業家の交際が話題になっているけど、真偽のほどはよくわからない。
- 「疑わしきは被告人の利益に」という法律の原則は、検察官が真偽不明の犯罪事実の証明を十分にすることができず、裁判官に有罪認定の心証を抱かせなかった時に適用される。
- この絵が高名な画家の真筆だと言う説の根拠となっている事実の真偽がはっきりしないそうだ。
「真偽」の類語
「真贋」
「真贋(しんがん)」は、本物と偽物(偽者)という意味です。「真偽」は、あらゆる物事に使うことができますが、「真贋」は、人や物が本物か偽物(偽者)かというときに使います。
「贋」は、きれいに並んで飛ぶ「雁(がん)」と、お金を意味する「貝」からなり、格好よく整った価値ある品物を表すところから転じて、形だけ似せた偽物(にせもの)という意味です。
【例文】
- 旧家の蔵で発見されたゴッホの作品だという古い絵画の真贋が争われている。
- 遺言書の真贋を裁判で争うことになった。
- なりすましを見破った銀行員の真贋判定能力には、警察官も驚いていた。
「虚実」
「虚実(きょじつ)」は、空虚と充実、うそとまこと、作りごとと真実という意味です。 漢方医学の用語では、不足と過分、体の機能や症状が衰弱していることと異常に亢進(たかぶっている)しているということを意味しています。
【例文】
- 彼は、虚実を織り交ぜて話す癖があるから、うっかり信じると大変なことになるよ。
- 週刊誌で報じられたスキャンダルには虚実取り混ぜて記事が書かれていると本人がブログで激しく批判している。
「白黒」
「真偽」の類語としての「白黒(しろくろ)」は、是非、善悪、嘘と本当という対立する意味を持っています。「是」は、正しいこと、「非」は、間違ったことを意味します。
「白黒」の語源は囲碁にあります。囲碁では、上級者が白い石を持ち、下級者が黒い石を持つため、強い弱いがはっきりわかるところから、「白黒つける」という言い方が生まれました。そこから転じて、善し悪しや嘘と本当という意味に派生しています。
【例文】
- 俺の言うことが本当か、お前の言うことが本当か白黒つけようじゃないか。
- 彼が嘘を言っているというわけではないけど、白黒はっきりさせる必要はあるね。