「やり方」とは
「やり方」は、「遣り方」と表記しますが、ひらがな表記のほうが一般的です。意味は、物事を行う方法や手段です。方法、手段と聞けば、これだけで分かったと思う人も多いかもしれませんが、もう少し細かく見ていきます。
「やり方(遣り方)」の構造
「やり方(遣り方)」の「やり(遣り)」は、動詞「やる(遣る)」の連用形です。この「やる(遣る)」は多義語ですが、主に次のような意味があります。
- 人や物を遠くへ移動させる。送り届ける。
- 人にものを与える。
- 行動や動作をする。
1の意味では、子供を塾にやる、使いをやる、迎えの車をやる。2の意味では、エサをやる、お年玉をやる。3の意味では、課題をやる、喫茶店をやる(営業する)、一杯やる、ギャンブルをやるなどのように使います。「やり方」の「やる」は3の意味です。
「方」も多義語ですが、やりかた、てだて、わざという意味があります。何かを「やる(遣る)」には、方法や手段が必要ですよね。そこから、「やる(遣る)」が変化した「やり(遣り)」と「方」が結びついて、物事を行う手段や方法を表す言葉になっています。
「やり方」の使い方
ここからは、表記を「やり方」で統一します。「やり方」は、教科書にあるような定形化した方法を指す場合もあれば、それをかみ砕いて(発展、省略などして)編み出した自己流の方法を指す場合もあります。ここではその両方を含め、いくつかの例文をご紹介します。
【例文】
- 自動車の運転は教習所で習うものだと思っていたが、最近はインターネットの動画を見て運転のやり方を勉強する人もいるようだ。
- パソコン音痴で意地っ張りの父が、インターネットショッピングのやり方を私に聞かず、チャットでオペレーターから教えてもらっている。
- 僕のやり方が気に入らないのなら、自分で勝手にやってくれ。
- 教えてもらったときは乱暴なやり方だと思ったけど、慣れると合理的で簡単なやり方だね。
「やり方」の類語 ~「方法」と「手段」~
「やり方」の意味の説明にも挙げた「方法」や「手段」は、「やり方」の類語と言えます。「方法」とは、目的や目標を達成するためのてだて。「手段」とは、目的を達成するために必要な具体的なてだてという意味です。
「方法」は、パソコンの操作方法とかスポーツ施設の利用方法など、全体的、総合的な意味でのやり方を指します。他方、「手段」は「方法」と同じような意味で使われることもありますが、「手段」を総合したものを「方法」とする用法もあります。
【例文】
- 患者のAさんに対して最も有効な治療方法を検討するための会議が開かれた。
- この本には、著者がインターネットビジネスで成功した方法が書かれている。
- 度重なる市民デモに対して、警察が強硬手段に訴えるのも時間の問題だ。
- 地震ですべての交通手段が使えなくなり、帰宅する方法がなくなってしまった。
「やり方」の類語 ~その他~
「仕方」
「仕方(しかた)」は、物事の具体的なやり方、手段のことです。「仕方」に否定の「ない」をつけて、「仕方ない」になると、どうにもならない、やむを得ないといった意味になりますね。そこには手段、方法がないからという意味合いがあります。
【例文】
- 新人研修の二日目は、お辞儀の仕方や敬語の使い方など接遇を教育係から叩き込まれた。
- 新人が不慣れな仕事でミスをするのは仕方ないことだ。
「方策」
「方策(ほうさく)」は、物事を進めていくための手段や方法のことです。「手段」のように具体的なことに対しても、「方法」のように全体的なことに対しても使うことができます。
【例文】
- インターネットを使った詐欺事件が後を絶たず、防止のための方策として、標語を募集することになった。
- 被災地救済のため、あらゆる方策を講じると首相が語っていた。
「術」
「術(すべ)」は、人が身につけた技や技能、物事を処理するてだてのことです。「術がない」という否定形の言い回しもよく使われます。
【例文】
- 彼女は言い寄る男達を上手くあしらう術を心得ていた。
- 治療は最善は尽くしましたが、これ以上施す術がありません。
「形/型」
「形/型(かた)」には複数の意味がありますが、「やり方」に近いのは、①(武道・芸能における)規範となる方式や動作、②決まったやり方や慣例です。「様式」や「スタイル(style)」にも似ていますね。
ただし、「やり方」には、「形/型」と違って、多くの人の手を経て長年培ってきたといったニュアンスは含まれません。
【例文】
- 「摺り足(すりあし)」は、能楽の舞や所作の形の基本とされている。
- 型通りの挨拶は抜きにして、早速本題に入ろう。