「鷹揚」の意味
鷹(たか)は空高く揚がっているときは、たいてい羽を広げてゆったりと舞っていますね。「鷹揚」(おうよう)は、そんな鷹の姿のように、些末(さまつ:取るに足らないこと)なことにこだわらない様子、人柄などが穏やかで上品な印象を与えることをいいます。
古語では、動作がゆっくりとしている様子、出世をして名前を知られることという意味で使われた例もありましたが、現代ではあまり見られません。
「鷹揚」の使い方
「鷹揚」は、人の性格や態度などをポジティブにとらえて使われる言葉です。少し堅い感じのする熟語ですが、現代では会話や手紙、文学作品中にも使われています。
「鷹揚」の例文
- 部下からの報告に上司は鷹揚に頷いて「全て任せるよ」と言った。
- 騒動が起こっても彼は動じないで、鷹揚な態度を崩さずにいた。
- Aさんは鷹揚な人で、細かいことを気にせずに物腰も柔らかい。
- Bさんは酔っぱらいが失礼なことをしても、鷹揚な態度を崩さず適当にあしらった。
「鷹揚」の類語
鷹揚自若・泰然自若
「自若」(じじゃく)とは、落ち着いていて慌てたり驚いたりする様子がないことを表しています。「鷹揚自若」(おうようじじゃく)は似た意味の言葉を重ねた、小さなことにこだわらずゆったりとして落ち着いている様子を指す四字熟語です。
「泰然」(たいぜん)も、物事に同じず落ち着いている様子を指します。よって、「泰然自若」(たいぜんじじゃく)も、同じような意味の言葉を使って、何が起きても平静で動じない様子を強調していることがわかりますね。
両者とも人の落ち着いた性格を描写しており、「鷹揚」と同じように使うことが出来ます。ただし、「泰然自若」においては、気品があるかどうかには言及していません。
【例文】
- 深窓のご令嬢であるCさんにとって、鷹揚自若に振る舞うのは難しいことではない。
- 数々の修羅場をくぐり抜けてきたDさんは、危機に瀕しても泰然自若としている。
おおらか
「おおらか」は人柄を表す言葉で、細かいところにとらわれないゆったりした性格を表します。人柄を表す場合は漢字で「大らか」と書きます。「鷹揚」と異なる点は、上品であるという意味合いが含まれないところです。
【例文】
- 大らかなEさんがいると場が和んで話しやすくなるね。
- 目についたことにいちいち文句を言わない大らかさが必要だよ。
なお、このほかにも、「おおらか」には、分量が多い様子、たくさんあることという意味もあります。この場合は「多らか」と表記します。
「鷹揚」の語源
「鷹揚」という言葉は、中国最古の詩集『詩経(しきょう)』に収められている詩に由来します。鷹が空高く飛んでいる姿から、もともとは、「ゆったりとして威厳があり、勇敢で武芸に優れている人」という意味でした。
一方、日本では、近世以降(安土桃山時代~江戸時代)に「鷹揚」という言葉が使われ始めます。この時点で原義の「武芸に優れた」という意味は失われ、ゆっくりとした動作、出世して名を上げる、気品がありゆったりとしているという意味になったのです。
「鷹揚」と「大様」の意味の違い
「鷹揚」と同じような読みと意味をもつ言葉に「大様(おおよう)」があります。似ていると言っても、「大様」の使い方には注意しなくてはいけません。
「大様」とは
「大様」はおおらかなさま、つまり、人柄や行動などがゆったりとして穏やかなことを表します。こせこせ(少しのことにこだわり過ぎ、ゆとりが全く感じられない)するところがないといったニュアンスですね。
また、ほかにも、大雑把であるなどの意味もあります。大雑把とは、細かい部分に目が届かず大きな部分のみをとらえて雑に扱う様子のことです。
「鷹揚」と「大様」の違い
一説には、もともとあった「大様」と、近世以降に入ってきた「鷹揚」の響きが似ていたために、意味も混同されるようになったと言われています。
ただし、「大様」はおおらかな性格が行き過ぎた「大雑把(おおざっぱ)な人」というネガティブな意味も持つ言葉です。この点において、「鷹揚」は「大様」とは異なります。
人を褒める時には「鷹揚」を!
「大様」にはネガティブな意味で用いる場合があるため、たとえ褒めるつもりだったとしても、「大様な態度」「大様な人物」と書くと、「大雑把でいい加減」と悪口を言ったと誤解される恐れがあります。
褒め言葉として使うのであれば、ネガティブな要素が含まれない「鷹揚」を選ぶようにしましょう。気品や威厳があるという意味合いですから、失礼には当たりません。