「大雑把」とは
「大雑把」には、以下のような意味があります。
- 細かいところまで注意が行き届かず、雑なさま
- 細かいところは気にせず、全体を大まかに把握するさま
1の意味には、「注意が足りない」とか「丁寧でない」という非難めいたニュアンスが感じられます。一方で2は、些事(さじ:こまかいこと)にとらわれず、あえて大局的な見方をする、という部分に肯定的な印象があります。
「雑把(ざっぱ/ざっぽう)」は、「雑にまとめられた、ひとまとまりのもの」を表します。ただし、単体ではほとんど用いず、「大雑把」や「薪雑把(まきざっぱ:薪用に切ったり割ったりした木切れ)」という言葉の中で使われます。
「雑」と「把」の字義
「雑」は、「(音読み)ザツ、ゾウ、(訓読み)ま-ぜる、ま-じる」と読み、以下の意味があります。
- まじる。まざる。入り乱れる:雑然、複雑など
- まとまりのない。とりとめのない:雑学、雑言など
- あらい。大まか:粗雑、乱雑など
「把」は、「(音読み)ハ、(訓読み)と-る、にぎ-る」と読み、以下の意味があります。
- とる。つかむ。にぎる:把握、把持(はじ:しっかり持つこと)など
- とって。にぎり。つか:把手(とって)
- たば。たばねたものを数えることば:十把一絡げ(じっぱひとからげ:一つ一つ取り上げるほどの価値がないものとして、ひとまとめに扱うこと)
「雑」の3の意味、「把」の1の意味をそれぞれ組み合わせると、「大まかにつかむ」と表すことができます。
「大雑把」の使い方
「大雑把」がどちらの意味で使われているかは、文脈による見極めが必要です。また、人の性格を指して使うこともあります。ただし、この場合はネガティブなニュアンスで用いられることがほとんどでしょう。
例文
- 新婚旅行の費用は、大雑把に見積もって100万円ぐらいかかりそうだ。
- 今回のイベントは、大雑把な計画だったので、細部でいろいろと問題が生じた。
- 小説の構想を大雑把にメモしてから、詳細な執筆に入った。
- リゾート開発の候補地選定について、まずはエリアを大雑把に挙げてみよう。
- 彼は、大雑把な性格で詰めが甘いので、いつも仕事でミスばかりしている。
「大雑把」の類語
「大まか」
「大まか(おおまか)」は、「こまかいことにこだわらずに物事を行うさま」や「緻密(ちみつ)でないさま」という意味があります。「大雑把」の2の意味での類義語にあたります。
【例文】
- 来週行われる大会での注意事項を大まかに説明します。
- 今度の舞台の大まかな内容をA4用紙1枚にまとめました。
「杜撰」
「杜撰(ずさん)」は、「いい加減で間違いが多いこと」という意味において、「大雑把」の意味1の類語と言えるでしょう。
「杜」は、中国・宋の詩人、杜黙(ともく)のことで、「撰」は、詩や文章を作ることです。杜黙の作る詩が、詩の様式や規則に沿っていないものが多かったことに由来すると言われています。「大雑把」に比べると、よりネガティブな印象の強い言葉です。
【例文】
- 杜撰な土木工事のだったため、台風の大雨で堤防が決壊してしまった。
- パスワードを書いたメモをデスクマットの下に入れておいたら、管理が杜撰だと厳しく注意された。
「ぞんざい」
「ぞんざい」は、「物事をいい加減に扱うこと。粗末に扱うこと。乱暴なこと」です。「細部まで注意が行き届かない。十分な注意をはらわない」という点で、「大雑把」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- Aさんの営業成績はトップクラスだが、社内でのぞんざいな口の聞き方や態度で、上司の評価を下げている。
- 引っ越しを依頼した会社の作業員が、家具をぞんざいに扱ったために傷がついたので、修理代を請求した。
「大雑把」の反対語
「几帳面」
「几帳面(きちょうめん)」は、「性格や行いがきちんとしていること。隅々まで行き届いていること」を言います。「細かいところまで気をつけるさま」は、大雑把と反対の意味と言えるでしょう。
「几帳」とは、寝殿造りの建物で、室内の間仕切りとして使われる調度品です。「几帳」の柱の角を残しながら両側に段を付けたものを「几帳面」と呼び、その丁寧な仕事ぶりから、上記のような意味が生まれたとされています。
【例文】
- 彼女は、几帳面な性格なので、日記や家計簿を毎日つけている。
- 彼の資料は、几帳面に作られていて読みやすい。