「些事」とは
「些事」の読み方は<さじ>。「些」という漢字には、僅か・少しという字義があります。「些事」は僅かな事、つまり「取るに足らないつまらないこと」「ささいなこと」という意味です。
「瑣事」と書かれることもありますが、多くの場合は「些事」の表記が用いられるようです。
「些事」の使い方
- 彼女は些事にこだわりすぎる傾向がある。
- 日常の些事に追われて、なかなか家の改修に取りかかれない。
- 些事にすぎぬと侮ってははならない。慎重に行こう。
「些事」の類語
「些」を含む類語
「些」という漢字を含む「些事」に似た言葉には、「些末<さまつ>」「些細<ささい>」があります。ともに、重要ではない、小さいことである様子を表す言葉です。それぞれ「瑣末」「瑣細」と表記されることもあります。
それ以外の類語
それほど重要ではない事柄という意味の「小事<しょうじ>」も「些事」の類語といえます。また、つまらないこと、細々としたことという意味においては、「細事<さいじ>」「雑事<ざつじ>」「野暮用<やぼよう>」などと言い換えることができるでしょう。
「些事」と「瑣事」の使い分け
上で、<さじ>には「些事」と「瑣事」、ふたつの表記があると説明しました。辞書でもこのふたつの表記が併記されていることから、使い分けには特にルールはありません。ただ、一般的な文章では、常用漢字の「些事」を用いることが多いようです。
「些」という漢字
「些」という字は、音読みでは「サ」、訓読みでは「いささ(か)・すこ(し)」と読みます。一説には、「些」は小さくバラバラに分かれる様子を表していると言われています。
そこから、上で説明したように、僅か・少しといった意味で用いられるようになりました。
「瑣」という漢字
「瑣」という漢字は、音読みでは「サ」、訓読みでは「くさり・ちい(さい)・つら(なる)」と読みます。文字の左側(へん)は「玉」、右側(つくり)は「小さい」ことを表しているそうです。
「瑣」には小さい・細かい・つまらないなどの意味があり、「些」と同じように用いられます。
「些事」の関連語
「大乗的見地に立つ」
「大乗的見地に立つ」は、<だいじょうてきけんちにたつ>」と読みます。大乗的には、大乗仏教の教えに叶う様子という意味もありますが、ここでは、私情を捨てて広く大きな立場から判断・行動するという意味です。一方、見地は、立場や観点を指します。
ですから、「大乗的見地に立つ」とは、些事にとらわれずに全体を見据えて判断する、自分の立場や利害を捨てて物事を広く捉えることを表す言葉なのです。
「木を見て森を見ず」
「木を見て森を見ず」は、些事にこだわりすぎて、物事の本質や全体をとらえられないことの喩えとして用いられます。つまり、物事を大局的に見られないということですね。
意外かもしれませんが、これは英語のことわざを日本語に訳したものです。英語では、"You cannot see the wood for the trees."といいます。
「彩ずる仏の鼻を欠く」
「彩ずる<さいずる>」は、彩色を施して飾ること。仏像を作る過程で、より良く仕上げようと手を加えるあまり、鼻を欠いてしまうことを表したのが、「彩ずる仏の鼻を欠く」という言葉です。
この言葉は、細部に念を入れすぎたために、かえって重要な部分を損なってしまうことの喩えとして用いられます。
「葉を欠いて根を断つ」
上の「彩ずる仏の鼻を欠く」に似た言葉に「葉を欠いて根を断つ」があります。こちらは、枝葉を除こうとして根っこを痛めてしまうことから、些細な欠点を取り除くことで大事な根本をダメにしてしまうことの喩えとして用いられます。
「小事は大事」
ここまで紹介した関連語は「些細なことにとらわれすぎないように」という意味の慣用表現でしたが、「小事は大事<しょうじはだいじ>」は逆の意味の表します。
些細な出来事から大事に発展することは少なくないことから、些事だと物事を疎かにしてはいけないという教訓として用いられます。「塵も積もれば山となる」も同じように使われる言葉です。
「油断大敵」
ご存知のとおり、「油断大敵」は、大したことはないと侮って油断していると思わぬ失敗をするという意味です。こちらも、些事を疎かにしないようにといったことを表しています。