「必死のパッチ」とは?
必死のパッチとは、「これ以上ないほど努力している様子」のことです。関西を中心に使われており、全力で頑張るという気持ちをユーモア混じりに強調したいときに使います。ちょっとした遊びでも、一種のギャグとして使われることもある言葉です。
とくに有名なのが、プロ野球の阪神タイガースの選手が、勝利した試合でのヒーローインタビューで使うシーンでしょう。タイガースファンは全国的に多いので、関西以外でも知られています。
必死のパッチの使い方
必死のパッチは「必死のパッチで〇〇する」といったように副詞的に使われることが多いです。たとえば、先述のヒーローインタビューで使う場合は、以下のような文になります。
- 「勝ち越しのチャンスだったんで、何とかランナーを返そうと、必死のパッチで打ちました!」
また、以下のようにそのまま使うこともあります。
- 「人手が少なくて、目が回るほど忙しいけど、何とか乗り切らなあかん。必死のパッチや!」
必死のパッチの語源
必死のパッチの語源については諸説あります。ここでは、とくに有名な2つの説を紹介しましょう。いずれの説にしても、押韻による面白さが定着の大きな原因になったのではないかと思われますね。
「パッチ=股引き」説
「パッチ」は関西弁で「股引き」のことを意味します。したがって、「パッチを履くのを忘れるくらいに必死である」または「パッチ姿であることを忘れるくらいに必死である」という意味で必死のパッチという言い回しになっているのではないかという説です。
「必至のパッチ」が変化したという説
もう一つが、将棋用語の「必至のパッチ」が変化したのではないかという説です。この場合のパッチは「桂馬」を意味しています。また、「必至」は将棋においてどのような受け手をもってしても解消できない、絶体絶命のピンチのことです。
すなわち、「必至のパッチ」は桂馬によって絶体絶命のピンチに追い込まれたことを意味します。こうなると、勝つためには相手のスキを突いて、王手を狙っていくしかありません。
このような逆転を狙って必死に将棋を指す様子によって、「必至」から「必死」に変化したと考えられています。
必死のパッチの類義語
必死のパッチを別の言葉に置き換えるとすれば、最大限の努力をするという意味を持つ言葉を選ぶ必要があります。ここでは、「一生懸命(一所懸命)」「全身全霊」「根性」の3つを紹介しましょう。
一生懸命/一所懸命
「一生懸命」あるいは「一所懸命」はどちらも「命がけで物事に取り組む様子」という意味があります。厳密な違いとしては、一所懸命は一つの場所や物に限定しているニュアンスがあるという点です。
実は、一所懸命が先に生まれた言葉で、「代々受け継がれてきた土地を命がけで守る」という意味で使われていました。
しかし、言い間違いによって一生懸命が使われるようになると、そちらのほうが命がけであるというニュアンスが強いと考えられるようになり、一生懸命のほうが一般的になったといわれています。
全身全霊
「全身全霊」とは「心と体のすべての力を出し切って物事に打ち込む様子」のことです。「霊」という漢字は「心」や「精神」といった意味があります。「全心全力」「全霊全力」など、似たような表記の四字熟語があるので書き間違えないように注意が必要です。
根性
「根性」は、「困難にもくじけないほどの強靭な気力」を意味する言葉です。絶体絶命のピンチに陥っても、はね返してやろうというニュアンスが、必死のパッチの語源である必至のパッチに通じるところがあります。
スポーツにおいてよく使われる言葉ですが、近年では根性という言葉のもとで無理なトレーニングやプレーを強いられ、心身に悪影響を及ぼす事例がメディアで取り上げられるようになってきました。
こうした背景から、「前時代的」といったネガティブなイメージが定着しつつあるので、使用する場合には注意が必要です。
必死のパッチの英語表現
「必死のパッチ」という表現の面白さを英語で表現するのは簡単ではありませんが、意味合いは類義語である「一生懸命」や「全身全霊」にあたる英語表現を使えば伝えることができます。
一生懸命を英訳すると「with all one's might」となります。全身全霊ならば「give body and soul」です。また、「必死」の英訳である「desperately」を使うとシンプルに表現できます。
- I played desperately to win the match.(試合に勝つため、僕は必死でプレーした)