「ふてこい」とは
「ふてこい」は関西地方の方言です。関西地方と言っても、大阪を中心に使われているので、周辺の府県では意味が通じないこともあるようです。
「ふてこい」は、一言で説明するなら「ふてぶてしい」となります。しかし、方言には一対一で対応する標準語があるとは限りません。「ふてこい」には、「ふてぶてしい」以外にも、「図太い・愛想がない」といった要素もあります。
次の項目ではこれらの言葉を掘り下げながら、「ふてこい」を詳しく見てみましょう。
「ふてこい」をもっと詳しく
「ふてこい」の要素
【要素①:ふてぶてしい(太々しい)】
憎たらしいほど図々しいこと、大胆不敵なことです。「ふてこい」は「ふてぶてしい」から派生した言葉だという説があります。また、「太い」は「神経が太い」のようにも使うことから、「太い」が「ふてこい」の語源とも言われています。
【要素②:図太い(ずぶとい)】
「図太い(ずぶとい)」は、少しぐらいのことでは、動じたりうろたえたりしないことです。周りで起きた物事に対して動じないという受け身の状態や態度を表します。
【要素③:愛想がない(あいそがない/あいそうがない)】
「愛想」は、人に接するときに相手に好感を与える言葉遣いや表情・態度のことです。「愛想がない」とは相手の言動や態度などの感じが悪いこと、つまり、無愛想(ぶあいそう)な様子を言います。
「ふてこい」のニュアンス
「ふてこい」には、上の要素①を中心として②や③も含まれています。つまり、「ふてぶてしい・図太い」のようなメンタルの太さだけでなく、「愛想がない」のような言動の印象が悪いことをも表しているのが「ふてこい」です。
「ふてこい」の使い方
- 彼は、一見物腰は柔らかいが、ふてこい目つきをしていて油断ならない。(ふてぶてしい)
- 呼ぶと来ないし、知らん顔しているとスキを狙って食べ物を盗っていくあの野良猫はふてこい奴だが、そんなところが猫好きにはたまらない。(ふてぶてしい)
- 上司からどんなに厳しく叱責されても、ケロッとしている彼のふてこさは、ちょっと尊敬する。(図太い)
- 警部の緩急織り交ぜた取り調べには、どんなにふてこい容疑者でも落とされるそうだ。(図太い)
- 合コンでほかの子が楽しく会話しているのに、彼女はふてこい感じで一人浮いている。(無愛想、感じが悪い)
- この間、クライアントとの打ち合わせで僕の前任者のふてこい態度が話題になってたよ。(無愛想、感じが悪い)
「ふてこい」の類語
「ど厚かましい」
「ど厚かましい」は「ど」+「厚かましい」から成る言葉で、超図々しい、超恥知らず、超遠慮がないという意味の関西弁です。
関西弁では言葉の頭に「ど」を付けて言葉を強調することがよくあります。「ど」は、「超/チョー」や「ものすごく」といった意味で、どアホ、どケチ、ど根性という具合に使います。
【例文】
- ほんまにお前は、ど厚かましいやっちゃな。いっぺんしばいたろか。
- さっきカリカリやったばっかりやのに、またくれ言うとる。ど厚かましい猫やで。
「にべもない」
「にべもない(鮸膠も無い)」は、愛想がない、そっけない、取りつく島もないことです。「ふてこい」の愛想がないという意味の類語と言えます。
【例文】
- ちょっと車貸してって頼んだら、にべもなく断られたわ。
- 彼女を映画に誘ったら、「あんたとはいかへん」って、にべもない返事やった。