「あきまへん」とは
「あきまへん」は、駄目ですという意味の京ことばで、「あきません」とも言います。「駄目」とか「やめろ」と言われるとカチンとくることでも、やんわりとした口調で「あきまへん」と言われたらあまり腹も立たないかもしれませんね。
「あきまへん」の構造
「あきまへん」は「あかん」の丁寧語です。「あかん」は関西弁で、物事がうまくいかないときや何かを禁止するときに言う言葉です。「こらぁあかん」(これはダメだ)、「そんなことしたらあかん」(そんなことしたらダメだ)などはテレビ番組などでもよく聞きますね。
この「あかん」は、物事の決着がつかない、進展しないことを表す「埒が明かぬ」(らちがあかぬ)を略した「あかぬ」が音変化したものです。「あかん」の「あか」は「あく」の未然形、また、「ん」は打ち消しの「ぬ」と同じであることが分かります。
一方で、「~まへん」は標準語の「~ません」に相当する言葉で、丁寧な打ち消しです。「~まへん」の前に動詞が付くときは連用形になるので、「あく」の連用形「あき」+「まへん」=「あきまへん」となります。
「あきまへん」の使い方
「あきまへん」は、「駄目です」「~できません」のように相手の言動を制止したり拒絶する言葉です。例えば、「廊下を走っては駄目です」といった日常的な言葉も、「廊下を走ったらあきまへん」のように置き換えて使うことができます。
【例文】
- 歩きスマホはあきまへん(え)。
- キープディスタンスをちゃんと守らんとあきまへん(え)。
語尾に「え」をつけるのは女性言葉の特徴ですが、男性の中にも「え」をつけて話す人はいます。
『京都のあきまへん(AKIMAHEN of Kyoto)』
京都市は外国人観光客向けにマナーガイドを作成しています。その中に『京都のあきまへん(AKIMAHEN of Kyoto)』というリーフレットがあり、京都市のホームページ「京都市情報館」でもダウンロードすることができます。
『京都のあきまへん』では、路上喫煙、社寺での撮影など、日本あるいは京都特有のものも含めたマナーが挙げられています。
リーフレットは英語版と中国語版ですが、そこに掲載されている「あきまへん」事例の一部を京都弁にしてみると次のようになります。
- 無理やり舞妓はんの写真を撮ったらあきまへん(え)。
- 畳に土足で上がったらあきまへん(え)。
「京ことば」あれこれ
「かましまへん/かましません」
「かましまへん/かましません」は、「あきまへん/あきません」の反対の意味の言葉で、かまいません、結構です、いいですといった肯定や了承の意味で使います。
【例文】
- そこは靴のまま上がってもうてもかましまへんで。
- このエリアの展示は写真に撮ってもかましまへんけど、あっちのエリアはあきまへん。
「おへん」
「おへん」は、ありませんということです。「無い」の丁寧な表現で、京ことばの「あらへん」と同じ意味です。なお、女性言葉では「おへんえ」となります。
【例文】
- 今日はええ魚がおへんなあ。
- そんなとこ探したって、なんもおへんえ。
「おしやす」
「おしやす」は、~なさってくださいという意味です。接頭辞「お」+動詞「する」の連用形+助動詞の「やす」の形で敬意を表す表現となっています。
【例文】
- 折角、あの子が映画に誘ってくれてはるんやから、そうおしやす。
- 台風が近づいてるから今日は早じまいして、帰りまひょか。あんさんもそうおしやったらどうえ。
「よろしゅうおあがり」
「よろしゅうおあがり」は、どういたしましてとかお粗末さまでしたという意味です。ここでの「おあがり」は、「めしあがってください」ではありません。食事を振舞われた相手が、「ごちそうさま」と言うのに呼応して、「よろしゅうおあがり」と言葉を返します。
ただし、相手が食事を食べ残した場合には、「よろしゅうおあがり」と言うことはあまりないようです。
【例文】
客:「結構な料理食べさしてもろうて、おおきに、ごちそうさんでした」
主人:「ご丁寧に。よろしゅうおあがり」