「しばれる」とは
「しばれる」は、厳しく冷え込む、凍るという意味の北海道・東北地方の方言です。漢字で書くと「凍れる」となりますが、会話での使用がほどんどなので、あまり書く機会はありません。
「しばれる」は、「寒い」と言うよりは「痛い」と言うほうが感覚的に当てはまると言われています。通常の寒さを通り越して、「痛い」と感じる体感は、温暖な場所で生まれ育った人にはなかなか理解しがたいものがあります。
しかし、実体験はなくとも、例えば、極寒(ごくかん・ごっかん)の地を舞台にした映画やドラマなどで寒さに震える姿や凍死する場面、あるいは厳冬の地で凍傷にかかり、手や足の指を失った人の話などを聞いたりすると、少しはイメージできるのではないでしょうか。
「しばれる」の由来
「しばれる」の由来にはいくつかの説があります。その一つは、「柴割(しばわ)れる」というものです。この「柴」は、昔話に出てくる「柴刈り」の「柴」のことで、燃料にする小枝などです。この「柴」があまりの寒さで割れてしまうところから来ているというものです。
また、あまりの寒さに身体が縛られてしまうように感じるというところに由来するという説もあります。どの説もなるほどと頷(うなず)けそうですが、確たるものはないようです。こういった由来を考えると、「痛い」という表現にも納得させられるものがあるのではないでしょうか。
「しばれる」の使い方
「しばれる」は、「痛い」と感じるほどの寒さを表現するものですから、氷点下をかなり下回ったような気温の時に使われています。
【例文】
- 札幌に転勤になって、初めての冬。「しばれる」という意味を実感した。
- こんなしばれる日によく一人で来れたね。
- 北海道の人に聞いたんだけど、氷点下15度以下になったしばれる日にはダイヤモンドダストが見られるそうだよ。
「しなれる」が使われた文芸作品など
「しばれる」が使われた文芸作品などには、以下のようなものがあります。それほど新しいとは言えませんので、知らない人もいるかもしれませんが、新聞やテレビなどで話題になったものです。
【凍れる瞳】(しばれるひとみ)
作家・西木正明氏(新潟県生まれ、秋田県育ち)の小説です。昭和63年(1988年)に『端島の女(はしまのおんな)』とあわせて第99回直木賞を受賞し、翌年にはドラマ化されました。昭和初期の北海道旭川市が舞台となった小説です。
【寒い夜】
シンガーソングライター・松山千春氏(北海道出身)の曲です。昭和53年(1978年)に発売されたアルバム『歩き続ける時』に収録された曲です。1番、2番の歌詞を「しばれるような寒い夜」で結んでいます。
「しばれる」まとめ
「しばれる」は、北海道や東北地方の方言ですが、この言葉を知っているひとは全国にいるようです。その理由は、音楽や文芸作品、テレビ番組、そしてSNSの普及などです。言葉が広まっていく速度は昔よりも速くなっています。
「しばれる」に限らず、いつのまにか全国的に知られていたという地元の言葉は、これからも増えていくでしょう。