「はいさい」の意味とは?
「はいさい」は、沖縄の方言のひとつで、「こんにちは」などの軽い挨拶の言葉です。とはいえ、標準語のおはよう、こんにちは、こんばんは、などのような時間につれての変化はなく、どんな時でも使うことができます。
その点はシンプルで便利と言えますが、実は「はいさい」には複雑な背景があり、慎重に使うべき挨拶でもあります。観光で沖縄を訪れ、この言葉を使ってみたい人もいることでしょう。その前に、「はいさい」がどのような性質を持つ挨拶かを知ることが必要です。
「はいさい」の背景
「はいさい」を使うには、いくつかの注意点があります。一つ目は、「男言葉」であることです。女性の挨拶言葉は「はいたい」です。
「はいさい」で知るべきことのもう一つは、少々複雑な背景です。かつて沖縄は琉球王国という独立国家でしたが、1872年に日本の領土となり、1879年に沖縄県となりました。沖縄方言のルーツは琉球語で、「はいさい」も、琉球王国の平民同士が使う挨拶でした。
その名残で、かつて王家があった首里の地域では、「はいさい」は、目上の人に使うことは控えるべき挨拶となっています。首里以外の地域では、逆に目上の人に使う尊敬語とされる場合もあるようですが、基本的には、那覇などを中心に、広くカジュアルに使われる挨拶です。
「はいさい」の使い方
まずは、上述したように「はいさい」は男性が使う挨拶であることと、首里近辺では地位ある人や目上、年上には控えることに留意しましょう。
ここでは、広く一般市民のあいだで交わされる「はいさい」の使い方をご紹介します。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」を兼ねる挨拶以外に、ごく気軽な声掛けとしても用いられます。「やあ」「元気?」「どうも」などの意味も持ちます。英語の「ハロー」に似ていますね。
電話に出るときは、「もしもし」ではなく「はいさい」(はいたい)が一般的です。また、「お疲れさま」「ちょっとすみません」という声掛けとしても使われます。このように、かなり広い状況での挨拶、声掛け、応答の言葉として幅広く使うことができます。
「ハイサイおじさん」とは
沖縄以外に住む多くの日本人にとって、「はいさい」という言葉を初めて耳にしたのが、「ハイサイおじさん」という歌ではなかったでしょうか。これは、1976年に発売された喜納昌吉(きなしょうきち)のデビュー曲です。
沖縄の少年と近所のおじさんのコミカルな対話の歌となっていますが、このおじさんのモデルは、沖縄戦でのトラウマを抱え、心病む妻を自死で失い、やがては酒におぼれていく悲しい背景を持っていたとのことです。さりげない反戦歌でもあると言えましょう。
「めんそーれ」
「はいさい」と同じくらい馴染みのある沖縄方言のひとつは「めんそーれ」でしょう。「めんそーれ沖縄」という言葉は、沖縄観光旅行のポスターなどでよく見かけますね。
「めんそーれ」は、基本的に人を招き入れるさいの挨拶の言葉です。「ようこそ」「いらっしゃいませ」という意味で使われます。沖縄で、「めんそーれ沖縄」という言葉をよく見かけるのは、観光客に向けてのもので、「ようこそ沖縄へ」という歓迎を意味しています。
そこから派生して「はいさい」と同じく「こんにちは」の意味も持ちますが、さまざまな状況で使われる挨拶ではなく、来客や観光客などに対して、歓迎の意味をこめた「こんにちは」として使う言葉です。