「あたぼうよ」の意味とは
「あたぼうよ」は「あたりまえだよ」という意味です。「あたりまえだ、べらぼうめ」を略した近世(江戸時代)の江戸下町の言葉で、かなり砕けた表現といえます。
「あたりまえだ」は「当然だ」、「べらぼう」は、この場合「普通では考えられない馬鹿げたこと」という意味です。また、「め」は接頭辞で前の言葉を強調する役割があります。「あたぼうよ」には「あたりまえだろう、なにを馬鹿げたことを」といった威勢のよさがありますね。
「あたぼうよ」の使い方
「あたぼうよ」は、江戸時代、江戸下町の町人(主に男性)が、誰かに分かりきっていることを言われたときなどに、「当然そうだ」と返答する時に使われていました。
彼らはべらんめえ口調(江戸下町の職人の間で使われていた、巻き舌であらっぽい威勢のよい話し方)で話していたので、「あたぼうよ」も別に怒って言っているわけではありません。
現在では、「あたぼうよ」を聞く機会があるとすれば、ドラマや映画の時代劇の町人のセリフや落語の小噺の中です。日常会話では聞いたり使ったりすることはほとんどないでしょう。
「あたぼうよ」の例文
- 「生粋の江戸っ子か」って?あたぼうよ。見りゃわかるだろ。
- 「生きの良い魚はあるかね?」「あたぼうよ。朝取れたものばかりにきまってらぁ!」
- 「助けて!」「あたぼうよ。困っている人を見捨てちゃおけねえよ。」
「べらぼう」の由来
「べらぼう」の語源には有力な説が2つありますが、両方とも人の行動や見た目を「バカ」と嘲る意味で使われた言葉です。
1つめの語源は、穀物を潰す道具「ヘラ棒」です。これが、「穀潰し(ごくつぶし)」を(ご飯をただ食べるだけで、定職につかず怠けている者)表すようになりました。
2つめの語源は、「便乱坊(べらんぼう)」または「可坊(べくぼう)」という人名です。徳川家綱の治世の頃に、見世物小屋で人気を博した奇人の名で、外見は「全身が黒く頭が尖り、目は赤くて丸い。猿に似てひどく醜く、愚かな仕草で笑いを誘っていた」と伝えられています。
のちに、「ヘラ棒」または「便乱坊/可坊」から生まれた「べらぼう」が、普通では考えられないこと、程度がひどいことという意味に転じたのです。