「ゲス」とは
実は「ゲス」に当てはまる漢字は三種類あります。「下種・下衆・下司」です。そもそもは「身分の低い人」や「使用人」の事を指していました。対義語は「貴人」を意味する「上種・上衆(じょうず)」です。
例外として「下司」は「げし・したづかさ」とも読み、対義語は「上司(かみつかさ)」と言います。これは特定の部門での身分を言い表していて、「下司」は平安末期から中世にかけて、荘園の現地で事務をつかさどった荘官です。そして、在京で彼らより上の役職のものを「上司」と言いました。
しかし、いつからか「下種」は身分だけでなくその性根まで表すようになり、現在よく知られる「下劣な品性」や「卑しい心」という意味を持つようになりました。
「ゲスい」
「ゲスい」と形容詞的に使われる時、それはある相手や状況を軽蔑している時です。自分の思い通りにするために平気で人を陥れたり、何食わぬ顔で嘘をついたり、そういう行為に対して一切罪悪感を覚えない人に対して「あいつはゲスいやつだ」と使います。
「ゲス顔」
また、イラストなどで人を見下したり、企んでいたり、生理的に受けつけないような表情をしているキャラクターの顔を「ゲス顔」と言うこともあります。
SNSなどで、あえて下劣なコメントをした末尾に(ゲス顔)とつけることで、「こんな表情で言っている」と読み手に想起させる使い方もあります。
「ゲス」の用例
- ゲスい考えって分かってるけど、愛情なんて金の前じゃ何の意味もないわ
- ワイドショーの報道の仕方があまりにもゲスすぎて見る気が失せた
- 自分から不倫しておいて全部相手のせいにするとか、ゲス野郎にも程がある
- 狙い通り(ゲス顔)
「ゲス(下種)」を使った慣用句
ではここで、「ゲス」を使った慣用句をいくつかご紹介します。おそらく多くの方が聞いたことがある「下種の極み」は、文字通り「下劣極まりない」「この上なく下品で卑しい」ことを意味しますが、他にはどんなものがあるのでしょうか?
- 下種と鷹とに餌を飼え(げすとたかとにえをかえ)…下賤の者には心付、鷹には餌を与えて手なずけなければ思うようにならない。
- 下種のあと知恵(げすのあとぢえ)…愚かな者は、事後になってようやく名案が出る。
- 下種の謗り食い(げすのそしりぐい)…品性の卑しい者は、まずいと文句を言いながらも、多く食う。
- 下種は槌で使え(げすはつちでつかえ)…下賤の者は、道理を説くよりも槌で打つようにして使え。
下種(下衆・下司)が身分を表していたことを考えると、差別的に感じるものもありますね。ですがそれとは別に、心の品性は行動にも表れるということが、これらの慣用句からは読み取れるように思います。