「ntr」とは
「ntr」とは、創作物におけるシチュエーションジャンルのひとつ。一般的には「寝取られ」をローマ字表記し、それを略した言葉であるとされています。
ただし表記揺れにより、「寝取り」を意味する場合もあるので注意が必要です。本記事では便宜上、「ntr」を「寝取られ」と解釈して話をすすめます。
「寝取り」と「寝取られ」
- 寝取り…男性主人公が恋人や夫のいる女性キャラクターを寝取る展開
- 寝取られ…男性主人公が恋人や妻、片思いの相手を寝取られる展開
上記の通り「寝取り」も「寝取られ」も、女性キャラクターが意中の相手以外の男性と情を通じる点は共通しています。
「ntr」の使い方
- 前知識なしでやったゲームがntrで数日へこんだ
- 好みのntr小説を見つけてテンションが上がる
- ntrは好きだけどバッドエンドは好みじゃない
「ntr」の分類
「ntr」は比較的、好みのわかれるシチュエーションジャンルです。感情移入の対象であり、ときには読者の分身ともなる主人公。その意中の相手が、自分以外の男性に心変わりするのだから無理もありません。
とはいえ、そういうシチュエーションに萌えを見出す人も少なからず存在します。どういった点に惹かれるのか、つきつめれば人の数だけ答えがあるということになるでしょうが、大きく以下のように分類できます。
- 寝取られる主人公の負の感情や惨めさに惹かれる
- 寝取られる過程における女性キャラクターの心理的葛藤や、堕落に惹かれる
- 寝取る男性キャラクターの優越感、万能感に惹かれる
多様な「ntr」
その他、「ntr」は設定や展開、シチュエーションなど以下のような要素で多様化します。
- 寝取り方(合意のうえ、関係の強要、主人公に隠れて、主人公の目の前でなど)
- 寝取る男性のキャラクター(容姿、年齢、職業、主人公との関係など)
- ヒロインとの関係性(妻、恋人、片思いなど)
- 破綻した関係の結末(主人公とヒロインがよりを戻す、寝取られたまま終わるなど)
「ntr」の具体例
『バハムートラグーン』
1996年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)より発売されたTVゲーム『バハムートラグーン』は、ntr作品の代表格として知られています。というより、この作品で「ntr」に目覚めたという人も少なくないのではないでしょうか。
ストーリーはシミュレーションRPGとしてはいかにも王道で、祖国を侵略され国を失った主人公が反乱軍を結成し、敵国と戦うというもの。問題は、登場キャラクターのひとりである王女ヨヨです。
彼女は主人公ビュウの幼馴染みであり、淡い恋心を抱きあった仲なのですが、祖国が侵略された際に敵国に捕えられてしまいます。「初恋の王女を取り戻してハッピーエンド」という王道展開を信じて疑っていなかったプレイヤーの心を打ち砕いたのは、ヨヨの裏切りでした。
必死の思いで救出した王女はあろうことか、敵国の将軍と恋に落ちていたのです。しかも物語上、ヨヨと件の恋敵パルパレオスは、どうしても仲間になる仕様です。裏切られた挙げ句その後もふたりの相思相愛ぶりを見せつけられて、ショックを通り越して不快感を覚えたプレイヤーも少なくないようです。
『ヴェンデッタ(白髪鬼)』
1886年にイギリスの作家マリー・コレリが発表した小説『ヴェンデッタ』は、「ntr」が小説の核となっています。
作品ジャンルは復讐劇。あるとき主人公は、伝染病で死亡してしまいます。しかし仮死状態だったのか、墓場で息を吹き返した彼は、こっそり帰宅した我が家で妻と親友の裏切りを知ってしまいます。蘇生後に老人のごとく頭髪が真っ白になってしまっていた主人公は、これを利用して別人になりすまし、妻と親友に復讐することを決意するのです。
『ヴェンデッタ』は、日本では1893年に『白髪鬼』というタイトルで黒岩涙香が翻案を発表。そののち1931年に江戸川乱歩が同じく『白髪鬼』のタイトルで、再度翻案を発表し好評を博しました。
江戸川乱歩版の『白髪鬼』では、主人公が単なる病死ではなく、親友に崖から突き落とされるというさらに悲惨な展開に変わっています。また復讐方法も乱歩ならではといえる陰惨な手段に変更されており、物語に凄絶さを加えています。
『ヴェンデッタ(白髪鬼)』は復讐劇というだけあって、カタルシスも用意されているので、「ntr」が苦手な方でも安心して楽しめるのではないでしょうか。