「∀」とは
「∀」は「全称記号(ぜんしょうきごう、英語では“universal quantifier”)」と呼ばれ、本来は論理学で使われる記号のひとつとして知られていました。
しかし現在では、後述するアニメ作品「∀ガンダム」や、「アスキーアート」の影響により、多様な読まれ方、使われ方をするようになっています。
「全称記号」とは
数理論理学(記号論理学)とは
「全称記号:∀」は論理学(数学)の中の一分野である「数理論理学(すうりろんりがく)」において、「全ての」を表す記号として使われていました。
「数理論理学」は別名を「記号論理学」や「数学的論理学」といい、ある命題や概念、推論などを記号化し、数学的な形式を用いて明らかにする学問で、哲学や数学などに応用されます。
∀=「全ての」
数理論理学における「∀」は、「全称記号」のほかに「全称量化子」「全称限量子」「全称限定子」「普遍量化子」「普通限定子」など様々な訳語があります。が、実際に発音される際には「全ての」「任意の」「それぞれについて」「いかなる」などと言われるようです。
例えば、命題「∀xF(x)」は、「全てのxに対して関数F(x)が成り立つ」といった風に発音されます。
ちなみに、「∀」その他の論理記号をタイピングしたい時には、「すうがく」と打って変換すると候補に出てきます。
「∀」の由来
「∀」を初めて用いたのは、ゲルハルト・ゲンツェンというドイツの論理学者だと言われています。
ゲンツェンは1935年に発表した論文の中で、「All-Zeichen(全−記号)」の頭文字「A」を上下反転させたものとして、「∀」を使用しました。
これは先人である論理学者ラッセルが用いていた、「ある」を意味する「存在記号=∃」に対応してデザインされたものだったようです。
「∀ガンダム」とは
∀ガンダム=ターンエーガンダム
「∀ガンダム(ターンエーガンダム/Called Turn "A" Gundam)」は、日本のロボットアニメ作品で、1999年4月から2000年4月にかけて全50話が放送されました。その後、2002年には再編集・新規カット追加版である映画「∀ガンダムI 地球光」と「∀ガンダムII 月光蝶」が2部作として劇場公開されています。
本作は、ガンダムシリーズの20周年記念作品として、本家「機動戦士ガンダム」の生みの親である富野由悠季が総監督を務めました。
また「ブレードランナー」「スタートレック」などで知られるシド・ミードがデザインしたヒゲを生やしたようなガンダムや、それまでのシリーズとは明らかに異なる牧歌的な世界観のために、ガンダムファンの中でも大きく賛否が分かれる作品となっています。
「ターンエー」とは
「∀=ターンエー」という読み方は、それまで一般的なものではありませんでした。しかし、「∀ガンダム」が生まれたことにより、少なくともガンダムファンの間では一般化したと言えるでしょう。
この作品において「ターンエー」が意味するものは「全てを肯定する」というものでした。富野総監督は、自分の意図や解釈を超えて拡大し続ける「ガンダムシリーズ」を全て受け入れ、「全てのガンダムがやがて行き着く先である、遠い未来のガンダム」として「ターンエー」を考案したのでした。
余談ではありますが、富野監督は優れた言語感覚の持ち主であり、多くの造語を作品に用いることでも知られています。例えば、「消したい過去」などを意味する「黒歴史」という言葉も、この「∀ガンダム」という作品をきっかけにして広まった言葉です。
アスキーアートと「∀」
「∀」はまた、「アスキーアート(AA)」や「顔文字」において頻繁に使われる記号でもあります。特に小文字の「ω(オメガ)」やキリル文字の「Д(デー)」などとともに、「キャラクターの口」を表現する意図で使用されています。
例としては以下のようなものがあげられ、主に「口角の上がった笑い」を表現しています。
- (゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ
- ( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!
- ( ´∀`)<オマエモナー
こうした使用方は「(´・ω・`)ショボーン」や「(´Д`)」などとともにネット掲示板「2ちゃんねる」を中心に広まりを見せ、現在ではスマホの連想変換等にも採用されるなど、かなり一般化しています。