「敬遠」の意味
「敬遠」(けいえん)の意味は以下の通りです。
- 嫌な人、面倒な物事などを避ける
- 野球の用語:わざと四球を出して打者との勝負を避ける
「敬遠」の出典
「敬遠」の出典は、中国の思想家「孔子」と弟子との問答集『論語』です。弟子が「知恵とは何か」と質問した際に、孔子が答えた内容から来ています。
【現代語訳】人々は生活をするためにやるべきことをやり、鬼や神などの大きな存在を敬いはしても、遠ざけるべきである。それが知恵と言うものだ。
孔子によると、もともとの「敬遠」する対象は鬼や神のような霊的で大いなる存在であり、「敬いながらも(畏れ多くて)身近に感じてはいけないもの」でした。時代が下るにつれ、避ける対象が人や物事に変わっていきました。
「敬遠」の使い方と例文
「敬遠」の使い方について、場面ごとに3つに分けて説明します。
1.嫌いな人を避ける
「敬遠」を人を避ける意味で使う場合、行動と気持ちは全く違うことがほとんどです。表向きは相手を敬う態度を装いながら、心のうちでは嫌っていて避けようとする状態を「敬遠」といいます。また、単に人を疎ましく感じて距離を置いている例も見られます。
【例文:表向きは敬っていても内心嫌っている】
- 会社では先輩を立ててはいるけれど、プライベートでは敬遠している。
- Aさんは有能で一目置かれているが、きつい性格なので周囲から敬遠されている。
- うちの社長は口やかましいので、仕事のやり取り以外は敬遠したい相手だ。
【例文:単に疎ましくて距離を置いている】
- 美人が隣にいると霞んでしまうものだから、彼女はあなたを敬遠しているのだよ。
- 人柄は悪くはないけれど、波長が合わずについ敬遠してしまう人がいる。
- ママ友との付き合いは気苦労が多くて敬遠したい。
2.面倒な物事を避ける
「敬遠」を物事に使う場合、面倒な事態になるのを嫌がってそのような直面しないようにすることをいいます。例えば、複雑で手数のかかる仕事や役目などを嫌がってあえて避ける場合などです。
【例文】
- 自治会の役職は私的な時間を取られるので、敬遠されやすい。
- 地味で骨の折れる現場での仕事は、若者が敬遠して人が集まらない。
- PTAの役員は何かと理由をつけて敬遠する人がほとんどなので、くじ引きで決めた。
3.野球用語:打者との勝負を避ける
野球用語で、得点されないように打者との勝負を避けてわざと四球を出して1塁に歩かせる戦術を「敬遠」といいます。首脳陣の判断で審判に申告をし、投球せずに四球を出したことにする「申告敬遠」もよく使われる戦略です。
【例文】
- スワローズで言えば、好打者の山田哲人選手やスラッガーの村上宗隆選手が、申告敬遠されやすい。
- チャンスに強い4番打者の打席で、敬遠策が取られた。次の選手で勝負するつもりだろうな。
- 次の打席はピッチャーだから敬遠したんだろうが、このチームの投手はバッティングが好きだから侮れないぞ!
「敬遠」の類語
忌避
「忌避」(きひ)とは、物事や人物を強く嫌って避けることです。「忌」の字義は様々ですが、この場合は「きらう」という意味で使われています。
似た意味を持っていますが、「敬遠」のように、表向きに相手を敬っているように見えるかどうかについては言及していません。
【例文】
- 彼は懲罰委員会への出席を要請されたが欠席した。病気を理由に忌避したようだ。
- 有る事無い事を書かれると困るため、記者を忌避する著名人もいる。
- バラの花に害虫がつくため、忌避剤をまいた。
また、訴訟事件で「忌避」を使う場合、裁判官や書記官などに不正が行われる恐れがある時に「訴訟の当事者が申し立てをして、そのような人を職務から外す」ことを表す場合もあります。
故意四球
「故意四球」(こいしきゅう)とは、野球やソフトボールでピッチャーがバッターにわざとフォアボール(四球)を与えることをいいます。「故意」は「意図的」や「結果が分かっていてわざとする行為」をいいます。
野球用語の「敬遠」は俗称で、ルールブックでは「故意四球」が正式な名称とされ、公式記録にも使われています。
【例文】
- 日本のプロ野球の通算記録では、最も故意四球をされたのは王貞治選手だ。
- 故意四球を多く受けるのは、大打者の証拠とも言える。