「情緒」とは?
「情緒」の読み方
「情緒」の読み方は、「じょうちょ」「じょうしょ」の二通りです。明治、大正の時代には、「じょうしょ」の読み方が主流でしたが、現代においては一般的に「じょうちょ」と読みます。
「情緒」の意味
「情緒」は、一般的な意味と、心理学における意味があります。
- 一般的な意味
- 心理学における意味
二つの意味はどちらも感情に関係しますが、静と動ともいえるくらいに離れていますので、それぞれに分けて後述します。
「情緒」の成り立ち
「情」は、心の動きや情感を意味し、「緒」には糸口、紐、手掛かりなどの意味があります。その二つが合わさっているため、人としての感情、および、その感情の糸口となる対象そのものの雰囲気や趣きという二種の側面があるのです。
一般的な「情緒」について
「情緒」の意味
「情緒」の一般的な意味は、次の二つです。これは、成り立ちの項目でご説明した、感情とその糸口、二つの側面を持つことによります。
- 何かにふれて、心に湧いてくるさまざまな感情
- 感情を引き起こさせる「何か」がもつ雰囲気や趣き
ここで言う感情とは、激しいものではなく、曰く言い難いようなしみじみとした趣きを指しています。
人の感じ方には個人差があるため、「何か」が万人に情緒を感じさせるわけではありません。例えば、最初の画像のような「葉に宿る水滴」を見て、単に「水の粒」としか感じない人もいます。
一方で、緑の葉のうえで光る水滴に、得も言われぬ精妙な美を感じ、心動かされる人もいます。後者のような感情が「情緒」です。
「情緒」の使い方
「情緒」の馴染み深い使い方は、風情というニュアンスで用いられる「○○情緒」ではないでしょうか。「江戸情緒」「下町情緒」「異国情緒」など、枚挙にいとまがありません。
- 「最近は、谷津の商店街で下町情緒を楽しむ外人もいて、びっくりしちゃうわ」
また、「情緒」は「情緒がある」「情緒がない/情緒に欠ける」などの言い回しで用いられます。
- 「夜の海に漁火が浮かんでいるこの景色は、情緒たっぷりで旅情に浸れるね」
- 「彼は大いに情緒に欠ける人物で、ワインを茶碗に注いだりするんだぜ」
「情緒」の類語
【感慨】
- 意味:しみじみとした感情。
- 例文:「彼と出会って今日で一年と思うと、感慨深いわ」
【情調】
- 意味:心にわくしみじみとした感情。事物が醸す(かもす)趣き。
- 例文:「海に沈む夕日の情調に、歌心が誘われた」
【心理】
- 意味:心の働きや、意識の状態。
- 例文:「自分を虐待していた親の介護するA子の心理は、他人には分からないわ」
【風情】
- 意味:上品で美しい趣きや味わいの意味。
- 例文:「金沢の古い町並みは風情があるね」
【雰囲気】
- 意味:場所や人々が自然に醸しだすもの。
- 例文:「あのレストランは、実に家庭的な雰囲気だね」
「情緒」の対義語
【知性】
- 意味:感情に左右されずに、物事を判断し、理解する思考力。
- 例文:「彼女ほどの知性の持ち主なら、きっといいアイディアがあるに違いない」
【理性】
- 意味:ことの善悪や意味などを正しく判断する、論理的に考える力。
- 例文:「どんな状況であろうとも、彼は理性を失わずに行動ができる」
心理学における「情緒」について
「情緒」の意味
心理学用語の「情緒」とは、喜怒哀楽や怖れ、嫉妬、不安のような、一時的で激しく、急激な心の動きを意味します。
「情緒」のもともとの意味は人の感情、感情の糸口といったことです。そのため、幕末から明治初期にかけ、英語の「emotion」の訳語として当てられ、心理学用語となりました。
心理学用語の「情緒」は、激しい感情の身体的な表出(冷や汗・顔が赤らむ・身体が震える)などに加え、自律神経系の活発な動きを含むことがあります。そこで、「情緒」よりも「情動」を用いるほうが適切であるともいわれています。
「情緒」の使い方
急に怒り出したり、泣き出したりするような精神状態は「情緒不安定」と称されます。この「情緒」は、心理学用語としての例です。
- 「思春期だから情緒不安定なのも仕方ない。頭ごなしに叱らずに、見守ってやろうよ」
- 「さっき笑っていたA子が、いまは大泣きしているの。情緒が不安定すぎて、心配」
「情緒」の類語
【情動】
- 意味:喜怒哀楽などの、急激で一時的な感情。
- 例文:「A子は、自らの情動の激しさに衰弱し、一時的に入院することになった」