「令嬢」とは?
「令嬢」(れいじょう)という言葉は、少々堅苦しい響きですが、社会人であれば、目上や仕事相手とのやりとりのなかで使うべき場面があるかもしれません。この機会に使いこなせるようになりましょう。
「令嬢」とは、身分の高い人物(貴人)の娘という意味であり、また、他者の娘を敬って表現する言葉でもあります。「御(ご)令嬢」というかたちはさらに丁寧であるため、手紙などの書き言葉で相手の娘にふれる際などには、こちらのほうを用いたほうがよいでしょう。
「令」の意味
「令嬢」以外にも、「令息」「令室」など、同じ「令」の使い方をするものがあります。「令」の意味を知ることで、これらの言葉も理解できることでしょう。
「令」は多義的な字で、美しい、よい、立派なという意味もありますが、「令嬢」の「令」は、他人の親族に対する敬称です。「令息」「令室」はそれぞれ、貴人の息子、妻、という意味とともに他人の息子、妻への敬称でもあるとわかります。
なお、年号である「令和」の「令」は、万葉集に出てくる「初春の令月にして…」という文の「令」から採用されたとのことです。こちらの「令」は「美しい」という意味です。
「令嬢」の使い方
まず、貴人の娘、という意味の「令嬢」の使い方から考察していきましょう。なにをもって貴人(身分の高い人物)とするかの明確な定義はありませんが、社会的地位が高い人物、富裕層や著名人など、いわゆるセレブリティの娘は「令嬢」といえます。
「令嬢」は、単に知識や学ある人物の娘には該当せず、家柄、地位、資産などの実質的な社会的ステイタスある家の娘を指します。ただし、皇室、王室などのロイヤルファミリーの「娘」は皇女やプリンセスと称される存在で「令嬢」に該当しません。
一方、他人の娘への敬称、という意味での「令嬢」であれば、上記のようなステイタスの条件なく使うことができます。ただし、時に非現実さを思わせるほど丁寧な敬称であるため、友人や年下、身内などの娘に使うことは不自然です。
定型的な表現
【社長令嬢】:貴人の娘への敬称としての「令嬢」は、たとえば(資産家の令嬢、貴族の令嬢)などのように「の」でつないで表現することができますが、「社長令嬢」に限っては、定型の言い回しとなっていて、「の」を用いません。
【深窓の令嬢】:「深窓」は、家の奥深くで大事に育てられたことの比喩として用いられています。すなわち、俗世間に浸らせずに大切に育てられた良家の娘さん、という意味の定型的言い回しです。
「令嬢」の例文
- あの資産家の令嬢には、さすがになんともいえあに気品が漂っている。
- 部に配属された真美さんは社長令嬢だが、一般的な社員として接するようにと人事から通達があった。
- 鈴木さまのご令嬢もイベントにご来場いただけるとのこと、楽しみにお待ちしております。
「令嬢」の類語
「息女」
「息女」(そくじょ)は、身分の高い人物の娘、また、他人の娘を敬っていう語です。「ご令嬢」同様に「ご息女」というさらに丁寧なかたちで使うことも多い言葉です。息子で対応する言葉は「子息」(しそく)です。
【例文】:このたびは、ご息女がアメリカの大学に留学されるとのこと、まことにおめでとうございます。
「お嬢様」
「お嬢様」(おじょうさま)は、格式張らない書き言葉や会話において、もっとも一般的に用いられる、他者の娘を敬う呼称です。「お嬢さん」も頻繁に使われるものの、目上や年上の相手に対しては軽い表現になりますので、「お嬢様」のほうが無難です。
【例文】:お嬢様が来春にご結婚とのこと、心からお喜び申し上げます。
「箱入り娘」
「箱入り娘」(はこいりむすめ)は、めったに外に出さないように家庭の中で大切に育てられた娘を意味します。「深窓の令嬢」と同様に、「箱入り」が俗世間にさらさないことの比喩になっています。「深窓の令嬢」と異なり、庶民の娘に対してでも使える言葉です。
【例文】:田中さんのところの美幸ちゃんは箱入り娘なのに、アルバイトなんかできるのだろうか。