「殊勝」の意味
「殊勝(しゅしょう)」の意味は以下のとおりです。
- とりわけすぐれていること。最勝(もっともすぐれていること)。
- (神社・仏閣や説教などに)心うたれること。敬虔(けいけん)な気持ちになること。
- けなげなさま。感心なこと。神妙(しんみょう)。
私たちが日常的に使う「殊勝な心掛け」や「殊勝な態度」は3の意味になります。「けなげ」とは「しっかりして強いさま・けんめいに努めるさま」を言います。また、「神妙」の意味は「すなお。おとなしいこと」です。
他に神仏を前にして「殊勝な気持ち」を持つ場合の「殊勝」は2の意味で使われています。「敬虔」とは「うやまいつつしむこと」です。1の意味で「殊勝」を使うことは他に比べて少ないですが、「殊」と「勝」それぞれの字義から一番わかりやすい意味と言えます。
「殊」の字義
「殊」は、訓読みで「ことに」とも読みますが、「特別にすぐれていること」「普通とは異なること」という意味があります。このような意味になる理由は「殊」の漢字の成り立ちにあります。「殊」は、「死」と「株」という漢字が合わさったものなのです。
「勝」の字義
「勝」には「勝つこと」以外にも「優れる。まさる。耐える」といった意味があります。「勝」の成り立ちは、船を持ち上げる浮力を意味する「朕」に「力」を合わせた形です。「力を入れて持ち上げる」姿から「耐える」という意味にも派生したと考えられます。
「殊」と「勝」を合わせると「他とは違い殊に優れている」という意味になります。また「殊勝」は、もとは仏教用語で「特に優れている(=心掛けがしっかりしている。けなげなさま)」を指していました。このことから「殊勝」は、現在の様々な意味に派生したとされています。
「殊勝」の使い方・例文
「殊勝な態度」や「殊勝な心掛け」などは相手のけなげな姿勢について表現する言葉で、主に「上司が部下に」「先生が生徒に」といった形で会話の中に含まれることが多いです。
そのため目下の者が目上の者に対して使うのは不適切と言えます。上司に向かって「殊勝な心構えですね」などと言えば、馬鹿にしていると勘違いされてしまうかもしれません。
例文
- 彼の殊勝な態度に先生は全幅の信頼を置いている。
- 修学旅行で奈良に行った時、東大寺の圧倒的な存在感を前に初めて殊勝な気持ちになった。
- 何かしら成し遂げたい事がある場合は殊勝な心掛けを忘れないことが大切である。
- 特別殊勝なところはないのだが何故か彼女の作品に目を奪われてしまう。
「殊勝」の類語
「奇特」
「奇特(きとく/きどく)」の意味は、「特に優れて珍しいこと。また行為などすぐれて賞すべきこと。殊勝」です。あまり知られていませんが「不思議な効力。超人的な力」という意味もあります。
会話の中で「奇特な方ですね」と使われることがありますが、この場合は「心掛けが素晴らしい人」という賞賛の言葉になります。
しかし、「奇特」に関して意味を勘違いしている人が実は多いです。「奇」という字から想像してなのか「奇妙な人。風変りな変な人」という意味で使われているようです。
「謙虚」
「謙虚(けんきょ)」の意味は、「控えめで素直なこと。謙遜(けんそん)」です。「謙虚な人」とは「偉ぶらず、学や才能を誇ることなく、相手の意見をすなおに受け入れることの出来る人」を指し、周囲から好かれる傾向があります。
「謙虚」は、自己主張が少なく相手を立てるようなニュアンスを持ちます。そのため「謙虚≒自信が無い」のように勘違いをする人もいるようです。しかし、自分の意見をしっかり持った上で他人の意見を受け入れることを「謙虚」と呼びます。
「謙虚」とは反対の意味を持つ言葉に「傲慢(ごうまん)」があります。思い上がり他人を見下すさまを表した言葉で、「謙虚」とは反対に周囲から嫌われる態度の1つです。