「無粋」とは?
「無粋(ぶすい)」は、「不粋」と表記されることもあり、漢字の示すとおり粋(いき/すい)でないことを表す言葉です。そのため「無粋」とは、人間の愛情や心の動きの微妙な事情や様子がわからないこと・そのもの独特の風情がわからないことを意味します。
特に、男女の間にある微妙な深い愛情がわからないことを表現している場合も多いです。また、遊びがわからないさまや面白味がないさまを指して「無粋」とも言います。
粋(いき/すい)とは何か?
「無粋」の「粋(いき/すい)」とはそもそもどういうことなのでしょうか。「粋」には以下のような意味があります。
- 容姿や気性が垢抜けて洗練されており、色気も持っていること。
- 人の心の表も裏も理解していること。
- 芸者や遊女の社会である花柳界に精通していること。
「粋」は、江戸時代から意識されるようになった美意識です。もとは3の意味にもある「遊び」について用いられる言葉でしたが、一般化されていきました。このような「粋(いき)」な生き方をすることは、江戸の町人にとっては理想でもあったようです。
なお、「粋(すい)」は、江戸時代に上方商人から発生したもので、やがて、江戸に伝わって「粋(いき)」として広まりました。意味内容には微妙な違いがあるという説もありますが、一般的には「いき」も「すい」も同じものとして扱われています。
「無粋」の使い方
「無粋」は、否定的な意味を表す言葉ですから、使う相手や場面は考えた方がよいでしょう。文語でも口語でも使うことができ、「無粋な」のように名詞を修飾するようなかたちで使うことも、「無粋だ」のように述語的な使い方をすることもできます。
例文
- 自分では自覚がないから困ったものなのだが、私は無粋なことを堂々と言ってしまっていることが少なくないらしい。
- 無粋な客がやって来ると、その場にいる他のお客さんたちがしらけてしまい、居心地の悪い空気になってしまう。
- 彼らの前でこういう話をするなんて、あの人は何て無粋なんだ。
「無粋な質問」はどう使う?
「無粋な質問をしますが」という前置きをしてから質問する場面を見聞きしたことがある方もいらっしゃるでしょう。「無粋な質問」とは、そのときの話の流れをわかっていない質問・その場の空気を乱す質問のことです。
意味自体はネガティブですが、質問する前に「無粋な質問をしますが」のように一言付け加えると、「無粋なことを聞くと自覚していますが、あなたにこのことを聞きたいのです」という意図を相手に伝えたうえで質問することができます。
この言葉は、話の流れを中断するような質問をするときや目上の人に対して質問をするときなどに使われることが多いようです。また、相手に対して失礼な質問をするときの断りの言葉として使うこともあります。
【例文】
- 無粋な質問と承知したうえでお聞きしますが、この絵は何を意味しているのですか?
- 無粋な質問をして申し訳ありませんが、お名前を教えていただけませんか?
- 彼は会合で無粋な質問ばかりしていたので、周りから嫌な顔をされていた。
「無粋」の類語
野暮(やぼ)
「野暮(やぼ)」とは、世の中のことに疎く融通がきかないこと・人情の微妙な事情や様子がわからないことという意味です。また、言動などが洗練されておらず荒々しいことという意味も持ちます。ちなみに「野暮」という漢字は当て字です。
【例文】
- 野暮なことを聞いたために、その場をしらけさせてしまった。
- 彼はいつも野暮な服装をしているが、本人は気がついていない。
無風流(ぶふうりゅう)
「無風流(ぶふうりゅう)」は「不風流」とも書き、風流でないこと・風流を理解しないことを意味する言葉です。「風流」とは、上品で美しく落ち着いた様子・物事のもつ面白味のことです。
「無粋」と同じように、「無風流な」のように名詞を修飾するかたちや「無風流だ」のように述語的なかたちで使われます。
【例文】
- 風流を愛する私にとって、無風流な父との会話は苦痛でしかなかった。
- 私の祖父は風流人と見られることが多かったが、実際には無風流だった。
無骨(ぶこつ)
「無骨(ぶこつ)」は「武骨」とも書き、言動などが洗練されておらず荒々しいこと・礼儀を知らないこと・物事の味わいがわからないことという意味です。
「無骨」は、複数の意味を持つ言葉であり、他にも「骨ばってごつごつしていること」「役に立たないこと」「都合が悪いこと」といった意味があります。
【例文】
- 誰に対しても無骨な態度でいることは、周囲の人に良い印象を与えないだろう。
- 無骨だったはずの叔父が、みんなが腰を抜かして驚くほどに風流な人になっていた。