野暮の意味
「野暮(やぼ)」は「粋(いき)」の反対語で、「不粋・無粋(ぶすい)」と同義語です。
「野暮」の意味は大きく分けて3つです。
1:風流を解さないさまや、遊里の事情に通じないさま。また、その人。
「風流は分かるけれど、遊里の事情って?」と思われる方は多いのではないでしょうか。
遊里(ゆうり)とは遊郭(ゆうかく)のことです。時代劇に出てくる遊郭だと吉原が有名です。かつては男性が遊女を買って遊ぶ遊里が全国にありました。遊里では、そこの事情に詳しく、気づかいができて、金払いがよく、お洒落で芸事に通じた男性が「粋」な客として人気でした。その逆が「野暮」な客です。事情に疎く、気が利かない、ケチでダサい客は、言うまでもなく遊女たちに嫌われました。
遊里が存在しない現在、遊里の事情に疎いという意味で「野暮」が使われることはありません。なので、風流に理解がないという意味を抑えておけば問題ありません。
2:人情の機微を解さないさまや世間の事情に疎いさま。また、その人。
現代において「野暮」という言葉は、この意味で使われることが大半です。
おもに、人の気持ちが分からない人に対して使う言葉で、わざわざ言うまでもないことを口にしたり、人の気持ちを考えずに行動したりする人は「野暮」な人です。「空気が読めない」「デリカシーがない」「配慮が足りない」「気が利かない」などに言い換えることができます。
「不粋・無粋」という言葉にも「人情の機微を解さない」という意味があります。「野暮」との違いはほとんどありませんが、「野暮」と比較すると、特に男女間の気持ちに疎い場合に使われます。
3:洗練されていない様子。
野暮な服装など、おもに見た目に対して使われます。「野暮」より派生語の「野暮ったい」のほうがよく使われます。後述の派生語「野暮ったい」を参照ください。
野暮の使用例
上記の意味を踏まえて例文を挙げます。
1の意味での使用例
「この庭の素晴らしさが分からないなんて、君は野暮だなあ」
2の意味での使用例
「男女のことに口を挟むな。野暮というものだぞ」
「仲間内で楽しくやっていたのに、部外者のくせに割り込むなんてあいつは野暮だ」
「初対面の女性に年齢を聞くなんて野暮な男ね」
「聞くだけ野暮だ。彼は会社をクビになったんだぞ」
3の意味での使用例
「彼はいつも野暮な格好をしている」
派生語「野暮天」「野暮ったい」「野暮用」
「野暮」から派生した言葉に「野暮天」「野暮ったい」「野暮用」があります。
野暮天
ひどく野暮なこと、またその人を指します。ひどい馬鹿を大馬鹿というように、ひどい野暮は野暮天といいます。
野暮ったい
あか抜けていない、洗練されていないという意味です。身だしなみなどに対して使う言葉で、野暮ったい恰好、野暮ったい髪形などのように使われます。「ダサい」とほぼ同義ですが、「野暮ったい」には田舎っぽい・時代遅れといったニュアンスが含まれることがあります。
野暮用
「野暮用」は便利な言葉です。もともとは「ちょっとした用事」「つまらない用事」を指していました。しかしながら、今では「仕事の用事」や「買い物などの日常的な用事」も「野暮用」、後ろめたいことや内密にしたいことも「野暮用」と言う人も少なくありません。
つまり、わざわざ話すまでもない用事や、人に話したくない用事を言い換えるための言葉が「野暮用」なのです。「今日、飲みに行こうよ」と誘って「ごめん、ちょっと野暮用で……」と断られたら、「分かった。また今度誘うね」とおおらかに受け止めましょう。「え? 何の用? 誰かと会うの?」などと詮索するのは、それこそ野暮というものです。
「野暮」は男性専用?
「野暮ったい」は男女どちらに対しても使われる言葉ですが、「野暮」はおもに男性に対して使われます。「野暮な人」という言葉からは大人の男性を連想します。かつては、遊里の事情に通じていない客を「野暮」とこき下ろしていたのですから当然かもしれません。遊里の客は大人の男性。「野暮な男」はいても「野暮な女」はいませんでした。
また、「野暮用」は男女どちらも使いますが、男性のほうがよく使います。「ちょっと野暮用で」と出かける男性は、単に説明するのが面倒なのか、それとも何か後ろめたいのでしょうか。
「野暮」まとめ
「野暮」はいろいろな意味を持ちますが、風流に疎い、人の気持ちが分からない、洗練されていないなど、どれもいい意味ではありません。野暮な人と思われないために、見た目も中身も「粋」でありたいものです。