「芋る」とは
「芋る(いもる)」は、サツマイモやジャガイモといった、おイモを表す単語「芋」に、接尾語「〜る」が付き、動詞化したものです。
「芋る」という使い方の他にも、「芋ら(ない)」とか「芋っ(てんじゃねえよ)」と言った風に語尾を活用したり、語尾を省略して単に「芋」と言ったりもします。
「芋る」の言葉通りの意味は、「芋になる」あるいは「芋のような振る舞いをする」ということです。
では、ここでいう「芋」とは、一体何のことなのでしょうか。
1.方言としての「芋る」
芋=田舎
都会風に洗練された文化や人に対し、田舎風なものを嘲って「芋(イモ)」という場合があります。
発祥の時期がいつ頃かはわかりませんが、田舎者の侍を指して「芋侍(いもざむらい)」という言葉があるところを見ると、相当古いのかもしれません。
芋るとイモい
都会に出てきたばかりで、おどおどしてしまう田舎出身の人のことを「お上りさん」などと言ったりしますが、「芋る」という言葉も「まるで田舎者のように物怖じをする」という意味で使われます。
昭和後期(1970〜1980年代)には、「ださい振る舞い」や「びびって萎縮している」ことをバカにする言葉として、「イモい」が広く使われていました。また、「イモくさい」とか「イモ野郎(女)」とか、単に「イモ」と言ったのでも、田舎っぺをからかう意図を含むことがあります。
日本全体の文化水準が向上し、都会と田舎の生活レベルにあまり差がなくなった平成以降の現在では、以前ほど多く使われない言葉かもしれません。
2.ビデオゲーム発祥の「芋る」
芋=芋虫スナイパー
「芋る」はまた、ビデオゲーム、それもオンラインなどで対戦ができるFPS(主観視点のシューティングゲーム)などのゲーム界隈で頻繁に使われる言葉でもあります。
ここで「芋」は、「芋虫スナイパー」という言葉の略語として認知されており、「芋る」はプレイヤーの特定のプレイスタイルを指して揶揄する言葉として使われています。
「芋る」と嫌われる
「芋る」は家庭用のオンラインゲームが普及して以降に使われるようになったインターネットスラングです。
シューティングゲームの題材となった実際の銃撃戦において、「スナイパー(狙撃手)」の役割は、一箇所にじっとしていて攻撃が届かない遠間から一方的に敵を倒すことにあります。
しかしながらビデオゲームのチーム戦において、メンバーの一人が安全な定点から動かないで狙撃ばかりしていると、他の仲間はかえって危険に晒されることとなったり、ゲーム自体の停滞をまねきかねません。
そのため、スナイパー(ばかりをやりたがって前線に出ようとしないプレイヤー)は嫌われる傾向にあり、そのようなプレイスタイルを「まるで芋虫のように這いつくばってばかりいるスナイパー」として「芋スナ(いもすな)」とか「芋る」というようになりました。
3.「バイク芋」とは
もう一点、モーターバイク関連の界隈でも「芋る」という言葉が普及しているようです。
ここでも「芋」は「ださい振る舞い」という意味で使われています。ギアチェンジを失敗したり(N芋)、スタンドを出したまま発進しかけて転びそうになったりする(スタンド芋)ようなカッコ悪い振る舞いを「バイク芋」と言います。
この言葉は「2ちゃんねる」などのインターネット掲示板を通じて広まったようですが、同時にそうしたださい振る舞いをライダーにそれとなく教えてくれる「芋神様(いもがみさま)」なる存在についてもささやかれています。
4.テニスにおける「芋る」
公式戦のような大きな大会ではない限り、テニスではセルフジャッジをすることが、多くありますがテニスでも「芋る」がつかわれることがあります。
テニスでは正当なジャッジをしないことを「いもる」
不当なジャッジのことを「芋ジャッジ」と呼ぶことから派生して、テニスにおいて、正当なジャッジをしないことを「イモる」と呼ぶようになったそうです。またそのようなプレイヤーを「イモラー」と呼ぶこともあります。
「芋る」の用法
それでは最後にそれぞれの用法ごとに「芋る」の例文を見てみましょう。
- 東京生まれは「故郷があっていい」とか言うが、芋くさい田舎より都会がいい。
- 一人が芋りだすと結局みんなが芋るから、途端にゲームがつまらなくなる。
- 彼女の前でいい格好しようと思ってたら盛大にN芋。恥ずかしすぎwww