「滋味」の意味・使い方
「滋味」(じみ)という言葉には、いくつかの意味がありますが、次の二つに大別することができます。
一つめは、栄養があり味がおいしいこと、または味のおいしい食べ物を表すものです。こちらは「滋味」の持つ本来の意味で、食べ物や飲み物に対して使われるのが一般的です。
二つめは、ゆっくり味わうと分かる深い味わいを表すものです。こちらの意味は、何も食べ物や飲み物に対して使われるとは限りません。たとえば、「滋味深い言葉」であれば、後になってかみしめると分かる味わいの深い言葉ということを表します。
「滋味」の例文
- 滋味深いといえば、おととし琵琶湖周辺を旅行で訪れた際に食べた「鯉の飴煮」が忘れられない。
- 山陰の宍道湖でとれたヤマトシジミの味噌汁は、滋味あふれる逸品だといっても過言ではない。
- 名人と呼ばれた陶芸家の作品が持つ、奥深い滋味を心ゆくまで味わってみたいものだ。
- 彼の残した言葉からにじみ出る滋味は、とうてい他の人には真似できないものだと思われた。
「滋味」のそれぞれの字義
「滋」の字義
「滋」は、育てるや潤す、増すなど、いろいろな意味を持つ漢字です。「滋味」においては、味がよい、栄養のあることを表しています。
「滋味」以外に、この意味で「滋」が用いられている熟語は、滋養(体の栄養となるもの)や滋液(味の良い液体)などです。
「味」の字義
「味」にもさまざまな意味がありますが、中でも今回の「滋味」で表しているのは次の二つです。一つめは、飲食物を舌で感じ取る「味」です。
もう一つに、物事の意味や深みを感じ取るという意味もあります。文芸や音楽、陶芸などの芸術作品に対して「味がある」などと表現する際に用いられるのが、こちらの「味」です。
「滋味」の関連語
- 美味(びみ)…味がよいこと。味がよいさま。
- 風味(ふうみ)…趣のある味わい。風情。
- 醍醐味(だいごみ)…すばらしい味わいの食べ物。本当の面白さ。
- 余韻(よいん)…音の消えた後まで残る響き。言外に感じさせる趣や情緒。
- 含蓄(がんちく)…内に深い意味が込められていること。
- 趣(おもむき)…風情のある様子。味わい。
上記の関連語のうち、1~3は食べ物や飲み物に対して使える言葉です。一方で、3~6は食べ物・飲み物以外の物事に対して使われます。
つまり、3の「醍醐味」はどちらの場合にも使える、いわばマルチプレイヤーといえる言葉です。
関連語を含む例文
- このような場所で美味を堪能できるとは、夢にも思っていませんでした。
- その料理からはほんのり磯の風味がして、私は思わず故郷のことを思い出した。
- この「なめろう」こそが房州旅行でしか味わえない、まさに醍醐味だといえるものです。
- その句の最後に施された体言止めは、鑑賞する者に何ともいえない余韻にひたらせてくれる。
- 師匠が贈ってくれた含蓄のある言葉を何度も噛みしめるように自分に言い聞かせていた。
- その絵からは日本人ならば誰もが見入ってしまうような、しみじみとした趣が感じられた。
「滋味」を英語で表すと?
「滋味」の英語表現のひとつに、「flavorful and nutritious」が挙げられます。「flavorful」は、風味豊かなという意味、もう一方の「nutritious」は、栄養価の高いという意味です。
この表現は、やや説明的なきらいはありますが、「滋味」の持つ栄養があり味がおいしいという意味を忠実に表現したものだといえます。
ただし、この表現は、一般的に食べ物や飲み物以外の、たとえば芸術作品に対しては使いません。これらに対しては、「pregnant with meanings(=含蓄のある)」などの表現で代用するのがいいでしょう。