「軽口」とは?
「軽口」(かるくち)とは、読んで字のごとく口が軽いことですが、「軽い」にもさまざまな意味があります。現代の日本で使用されている「軽口」の意味は、大きく分けて以下の三つです。
- 語調も軽く、内容も面白い言葉や話。ウィットのきいた、滑稽な言葉や話。
- 口が軽く、ぺらぺらとよくしゃべること、そのさまや、そのような人。
- 淡泊な味わい。口当たりのよい味。
1番目はポジティブな意味、2番目はネガティブな意味、そして3番目は飲食物について、となかなかバラエティに富んだ意味をもっていますね。それだけに、慎重に使いたい言葉といえるでしょう。
ポジティブな「軽口」とは?
ポジティブな意味での「軽口」は、例えるならば、人の輪の中心にいるような人気者が得意とするトークのことです。軽妙で、気が利き、たわいない話で人を笑わせ、惹きつける、そんな口上のことですね。
ただし、そんな「軽口」も度合いがすぎれば、軽薄なおしゃべり好きとみなされてしまうかもしれません。
ネガティブな「軽口」とは?
ネガティブな意味での「軽口」は、その喋り手が要注意人物とされかねない「口の軽さ」のことです。
たとえば、人から秘密だとして聞かされたことも、黙っていることができずに他者に伝えてしまったりします。このような「軽口」の人は、信用をなくしがちです。
あるいは、自分のことでも、慎んでおけばいいような内容をもあけすけに話し、聞き手に引かれてしまったりもします。自分のことですから他者に迷惑はかけませんが、考えなしになんでも軽々しく話す人物という印象を与える可能性があります。
飲食物における「軽口」とは?
飲食物における「軽口」は、上記の二つの意味とはがらりと変わり、飲食物の味わいにおける軽さです。すべての飲食物について用いられるわけではなく、最も馴染み深いのがお酒の味わいを表す場合です。
英語でも、ワインの味わいの表現のひとつに「ライトボディ」というものがあります。フルーティーで色も薄め、まさに「ライト」は「軽い」という意味なのです。
こっくりと濃厚な味わいにくらべ、さっぱりとしたものを「軽口」とするのは、伝わりやすい表現ですね。
「軽口」の使い方
上記三つの用法1・2・3を、その順番どおりにそれぞれの文例を下記に挙げます。
ポジティブな「軽口」
(A男)
鈴木君はトークの名手だなあ。たわいないことでも、面白おかしくウィットを利かせる軽口ぶりで、いつも女の子たちに囲まれている。
ネガティブな「軽口」
(B子)
私、絶対に秘密だと念をおして、雅代さんに転職したい気持ちを打ち明けたの。そうしたら、三日後には課のみんなが知っていたのよ!彼女がここまで軽口だったなんて。
飲食物における「軽口」
(C男)
食事のおともには、軽口の日本酒が最高だよ。さっぱりと軽いから、料理の味を邪魔しないんだ。
「軽口」の類語:「冗談」
「軽口」の類語としては「冗談」が挙げられます。冗談の意味は以下の二つ。
- ふざけて言う言葉、遊び心による面白おかしい内容の話。
- (派生的に)ふざけてする行為。
「軽口」は言葉にまつわるものですから、その類語としては1.の意味においての「冗談」がかなり近い意味ですね。
「冗談」と「軽口」の違い
ただし、「軽口」にはたわいのなさというニュアンスが加味されていますが、「冗談」が指すユーモアにはいろいろなものがあります。たわいのない冗談ももちろんありますが、名言ともいえる深い内容の冗談も多くあります。
とくに欧米諸国では、上質な冗談(ジョーク)は社交の花とされることもある一方で、「軽口」にはそこまでフォーマルに使えるニュアンスはありません。
「冗談」の例文
(D子)
私の彼って、冗談ばかり言っているの。最初は面白くて退屈しなかったけれど、最近本当に中身がない人間だとわかってきて落ち込んでいるわ。
(E男)
毎年、仕事はじめに社長の訓辞があるのだけれど、上質な冗談をまじえながら社員のやる気を鼓舞するベストスピーチなんだ。