「風俗」の意味や使い方
「風俗」は「ふうぞく」と読み、現在ではもっぱら、後で項を設ける「性風俗特殊営業」の略として使われていますが、本来は以下のような意味の言葉です。
- ある時代や地域など、一定の社会集団に広く行われている生活上のさまざまな慣わし。しきたり。規律。風習のこと。英語の「マナー」に近い。
- 容姿と身のこなし。身ぶり。態度。
- よそおい。みなり。服飾のこと。
「風俗」の用例
【さまざまな慣わし】
- 江戸時代の風俗
- 昭和の風俗
- 国の風俗人の分限をうかがひ見られける/『太平記』
- かゝる道の果、塵土の境まで、
神霊あらたにましますこそ、吾国の風俗なれと、いと貴けれ/『奥の細道』
【容姿と身のこなし】
- 情けあって大気に生れつき、風俗太夫職にそなはつて/『好色一代男』
【よそおい】
- 夜道の用心にかく男の風俗して/『西鶴諸国ばなし』
「風俗」の文化
「風俗」と付く現代でも身近なものに、「風俗画」、「風俗小説」などがあります。
- 風俗画…衣食住などの日常生活を主題とした絵画。古代エジプトやローマからすでに見られ、中世のルネサンスや近代絵画などが有名。日本でもから存在し、桃山時代の「洛中洛外図」をきっかけに土佐派、狩野派を中心に発展し、浮世絵が生まれた
- 風俗小説…ふうぞくしょうせつ。その時代の世態、人情、生活を外面的・現象的に描いた小説のジャンル。特に戦後に発展
平安時代の「風俗歌」
「風俗歌(ふうぞくうた、または、ふぞくうた)」とは、地方の民謡のことです。古代から諸国に伝わってきた歌謡を、平安時代に貴族社会が宴遊に取り入れたもので、言わば物珍しさやエキゾチックなイメージ、行ったことがない未知の国を想像して楽しむ目的のものでした。
特に東国(近畿以北、関東)のものが多く、おそらく、現在の東北民謡の原型のようなものに近かったはずです。「未知の国の人や生活をイメージする」というニュアンスで「風俗」の語が使われました。
「風俗」の類語
「風俗」の類語に「習俗(しゅうぞく)」、「風習(ふうしゅう)」があります。「風俗」と「習俗」はある社会集団内の衣食住や行事などに関する事柄、「風習」は社会集団内で守ってきたしきたりを特に意味します。
また、関連する言葉に「風紀(ふうき)」があります。社会集団生活を送る上で必要な風俗上の規律の意味ですが、特に男女関係の節度などを表す場合が多く、「最近、社内の風紀が乱れている」と言った場合、遅刻が多いとか、態度がよくないといったような例にはあまり考えません。
この、本来「風紀」だけが持っていた男女間の性的なニュアンスが、「風俗」の類語含む全体を隠喩するようになった結果、現在の「風俗」の意味合いが発生したとも考えられます。
「風俗」のビジネス
「風俗営業」について
「風俗営業」の定義は、「客に遊興(ゆうきょう。遊び興じること。特に、酒色に興じること。)、飲食、または射倖(しゃこう。努力をせずに偶然の利益や成功をねらうこと。この場合は賭博や宝くじなど。)的遊戯をさせ、一定の設備を伴う営業の総称」となっています。
該当する業態の店舗は以下のようなものです。
- 料理店
- カフェ
- 待合(芸妓との遊興や飲食を目的とする場所を提供する貸席業。京都では「お茶屋」と呼ばれる業態)
- キャバレー
- ダンスホール
- マージャン屋
- パチンコ屋
1948年制定(1984年改正)の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる風営法)」によって規制されており、営むには都道府県公安委員会の許可が必要になります。いわゆる「水商売(収入が客の人気によって成り立つ、盛衰の激しい商売)」です。
「性風俗特殊営業」について
1984年の改正後「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に名称変更し、新たに特殊風俗関連事業として、ソープランド、アダルトショップ、ラブホテル、ストリップ劇場などが規制対象に加えられ、1999年以降はインターネット上のコンテンツ規制を盛り込んだ改正がさらに行われました。
現在の「風俗」という言葉は、この業態の略としてもっぱら使われています。