「失念」の意味
「失念」の意味は以下の通りです。
- うっかり忘れること
- [仏教用語]記憶を散乱させる煩悩の1つ
「念」の字義は、思い・心の中で考えていること・注意などです。「失念」とは、これらを失うことを表します。
「すでに知っていたことや覚えていたことを忘れる」ということが「失念」の意味のコアです。
「失念」の使い方
「失念」は、ビジネスの現場で「不注意で忘れていた」ことを表す際に、「失念する」という形でよく用いられます。謝罪するときに使うこともあるので、誤用しないためのポイントを押さえておきましょう。
「失念」の使い方のポイント
- 「失念」を「知らなかった」という意味では使わない
- 「失念する」の主語は自分
- 「失念」はモノを忘れた場合には使わない
【1について】
「失念」はすでに知っていたこと、経験したことを忘れるという意味です。もともと知らなかったこと、一度も経験したことがないものに対しては使えません。よって、「こんな美味しい食べ物があったなんて失念していた」は誤用です。
【2について】
「失念」は謙譲表現として用いられるので、「失念する」の主語となるのは自分です。「部長が失念された」という文章は、一見丁寧に感じるかもしれませんが、この使い方は誤りです。正しくは「部長がお忘れになった」となります。
【3について】
「失念」は覚えていたこと、具体的には、約束、注意点などに対して用いられます。物理的なモノには使いません。そのため、「キャンプに歯ブラシを失念した」というのはという文章は誤りです。
「失念」を使った例文
- 昨日言伝を預かりました〇〇と申します。社長への伝達を失念しておりまして、先程伝えたところです。大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。
- 今日の放課後に職員室へ来るように言われていたのを失念していたため、あとから担任に電話で怒られた。
- プレゼンで使う資料作りを失念していたので、徹夜作業になりそうだ。
- 友達と映画を見に行く約束をしたにも関わらず、すっかり失念して昼すぎまで寝ていた。
「失念」の類語
「忘失」
「忘失」の意味は「すっかり忘れ去ること。忘れてなくすこと」です。意味は「失念」と似ていますが、忘れる度合いは「失念」よりも強いニュアンスがあります。
また、「忘失」は「覚えていたことを忘れる」という場合にも使いますが、モノに対しても用いられます。例えば、「書類をどこかに忘失した」は、書類をどこかに置き忘れて紛失したという意味です。
【例文】
- さっきまで商談していた相手の名前を忘失してしまった。
- 定期として使っているICカードを通勤途中に忘失した。
「度忘れ」
「度忘れ」の意味は、「ふと忘れてどうしても思い出せないこと」です。「覚えていたことを忘れる」という点は「失念」と同じです。しかし、「失念する」は硬い表現、「度忘れする」は柔らかい表現として用いられます。
なお、「度忘れ」は「胴忘れ」とも言います。この「度」や「胴」の由来には諸説ありますが、はっきりしたことは分からないようです。
【例文】
- 家を出るまでは、買いたい本のタイトルをを覚えていたのに、店についたら度忘れしてした。
- 日本の首相の名前が出てこないなんて、度忘れじゃすまされないよ。
「忘却」
「忘却」の意味は、「完全に忘れること」です。「覚えていたことを忘れる」という点では「失念」に似ていますが、「完全に思い出せなくなる」という含みがある点では異なります。
「忘却の彼方」は「記憶や思い出の一切を忘れること」を言い、書籍や歌のタイトルとしてもよく使われます。「彼方(かなた)」は離れたところのことです。
【例文】
- 彼女の存在はあまりにも大きかったため、忘却しきれない。
- 中学時代の黒歴史は、忘却の彼方へと消し去った。