「鬼畜」の意味
「鬼畜」(きちく)には、次の2つの意味があります。
- 鬼と畜生(ちくしょう)
- 残酷な行いをする者。恩義を知らない者。
一般的には、2の意味で使われることが多いかもしれません。まずは字の通りに、「鬼」と「畜生」の意味を確認しておきましょう。
鬼
「鬼」とは、「穏」(おぬ)、「姿が見えないもの」の意です。その成り・形は文化や時代によって少し異なりますが、『桃太郎』に登場するような、人身に牛の角、裸に虎柄のふんどしを締めた怪力の化け物をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
「仕事の鬼」のように、「勇猛」「無慈悲」「巨大」など、良い面を抽出したイメージで語られることもないわけではありません。しかし、世間一般においては、「邪悪」「恐ろしい」「人に害をなすもの」といったイメージが支配的なようです。
「鬼」の英訳は「demon」(悪魔)または「orge」(オーガ、人食い鬼)。物のたとえとして使用される場合を除いては、「人間ではない、恐ろしい怪物」を指すと考えて良いでしょう。
畜生
「畜生」とは、「人に畜(やしな)われて生きているもの」の意で、鳥、獣、虫、魚などの総称です。仏教では、生前悪行をなしたものが行く世界を「畜生道」と言い、そこに落ちた人は禽獣(きんじゅう:鳥や獣)となって苦しむ定めにあります。
そこから派生したのかは定かではありませんが、「畜生」は「人でなし」を意味する罵倒語や悪態としても使われています。物事がうまくいかない時、思わず「ちくしょう!」と口にしてしまう体験があなたにもあるのではないでしょうか。
人を「獣」(けもの、けだもの)と呼ぶことが罵倒であるのと同様、「畜生」も、人を(仏教上)人より劣った地位にあるとされる禽獣同然に捉え、憎しみを込めて呼ぶ言葉であることがわかりますね。
「鬼畜」の使い方
「鬼畜」は、その字の通りに「鬼と畜生」を指すことはまずありません。「鬼」は想像上の怪物ですし、「畜生」も、現実的には人間の在り方を諌めるために用意された宗教説話上の解釈です。
したがって、「鬼畜」は通常人に対して使う言葉あり、人の道を外れた人、人として当然持っているであろう情(愛、思いやり、なさけ、こころ)を持たない人を「鬼も当然」「畜生も同然」として呼ぶ言葉です。
当然ながら、人を指して「鬼畜」と呼ぶ場合、相手を人扱いしないほどの、最上級と言って良い侮蔑の意を含みます。使う場所や使う相手はよく選んだほうが良いでしょう。
例文
- 犯罪史上まれにみる残酷な犯行内容を、裁判官すらも顔をしかめて「鬼畜の所業」と表現した。
- 自分の娘に性的な欲望を抱くなんて、私はそんな鬼畜ではない。
- 重い風邪と診断され、寝込む子供を「甘えていないで、学校へ行け」とどやすなんて、あなたは鬼畜か。
- 戦争中は、敵国であった米英に対し、ためらいもなく「鬼畜米英」という言葉が使われていた。
アダルト用語における「鬼畜」
成人向けコンテンツなどにおけるアダルト用語においては、「鬼畜」という言葉が、しばしば男女の合意の上での姦通(=和姦)ではない、SMなどの特殊なプレイを含むジャンルワードとして使われることがあります。
人を人とも扱わず、縛ったり虐げたりして、時には残酷非道に扱うような性癖を「鬼畜」という言葉で喩えていると考えられ、そのような成人向け作品(映像、小説など問わず)を「鬼畜系」や「鬼畜もの」と呼ぶこともあります。
一般的に意味に従うと、「鬼畜もの」に残虐なイメージを喚起される方も多いかもしれません。しかし実際には「和姦ものではない」ジャンルをひとくくりに「鬼畜」と呼ぶ傾向もあり、性癖としてはそれほど限定的なものではないようです。