「お為ごかし」の意味とは?
「お為(ため)ごかし」とは、表面上は相手のために何かをするように見せて、実は自分の利益になるようにし向けていることです。
「お為ごかし」の構成
「お(御)」は、名詞の上に付いて尊敬や丁寧の意を表す接頭語です。また、「為」は利益や得になること、もしくは、役に立つことをいいます。
「ごかし」は接尾辞で、人のために行動するように見せかけたり、おだててだましたりすることです。語源である動詞の「こかす(転す/倒す)」は、「人を倒す・転がす」、「ある所に隠す」以外に、ごまかす、人をだますという意味があります。
「お為ごかし」の使い方
「お為ごかし」は、そのような行動に対する批判や嫌悪が含まれることもありますし、自分の行動を自虐的に表現することもあります。
やや古めかしい表現ですから、若い人はあまり使わないかもしれませんが、「お為ごかし」という言葉を使うのは、例えば次のようなシーンです。
なお、「お為ごかし」は、真意を見抜かれると、相手や周囲から「あいつは所詮利己的な人だ」とかえって株が下がってしまうことも往々にしてあります。
シーン1:自分の利益のために目上の人や有力者に親切にする
「お為ごかし」を使うシーンのひとつとして、目上の人や有力者に対して親切にしたり、お世辞を言って気分を良くさせて便宜を図ってもらう場面が挙げられます。
【例文】
- 彼が部長のゴルフに付き合うのは部長を慕っているからではなく、お為ごかしに過ぎない。
- 商品を買ってもらうために、お客さんにお為ごかしを言うのも疲れるよ。
シーン2:相手を思う振りをして自分の印象を良くする
「お為ごかし」は、相手のために行動する振りをしながら、自分の印象を良くしようと企む場面でも見られます。分かりやすいのは、「あなたのために~」「あなたのことを思って~」とアピールしているかのような場合です。
【例文】
- 彼女は「あなたの健康を考えてお弁当を作った」と言っていたけど、家庭的な女性に見せるためのお為ごかしだろう。
- 彼の行動はお為ごかしの親切に思えて、心から喜べない。
「お為ごかし」の類語
上手ごかし
「上手(じょうず)」は、手際が良い、巧みであるという以外に、口先だけでご機嫌取りをすることを表します。「上手(じょうず)ごかし」とは、お世辞や口先だけの親切で相手に媚びへつらって、取り入ることです。
「お為ごかし」は話すことを含めた行動をを表すのに対し、「上手ごかし」が話すことに焦点を当てている点では異なります。なお、現代語では「上手ごかし」という語はあまり使われていません。
【例文】
- 彼は、部長の奥さんにまで上手ごかしを言って自分の評価を上げた。
- 何を話していたのか尋ねると、部下たちは上手ごかしにごまかして散っていった。
綺麗事
「綺麗事」(きれいごと)の本来の意味は、手際よくきれいに仕上げた仕事や、手などを汚さないで済む仕事という意味です。
転じて、実情とはかけ離れてきれいに表面だけを取り繕ったり、見た目や口先だけで体裁を整えたりすることを表すようになりました。こちらは「お為ごかし」に似ています。
【例文】
- 綺麗事だけを並べたような公約では、市民の目はごまかせない。
- あなたが何を言っても綺麗事を言っているようにしか聞こえないね。
おべっか
「おべっか」とは、相手にへつらって機嫌をとること、相手を喜ばせるために思ってもいないことを言うことといった意味です。「お為ごかし」と意味がよく似ていますね。「おべっかを言う」「おべっかを使う」などの言い回しでよく用いられます。
【例文】
- 取引先の部長は実直な人だから、おべっかを言っても通じない。
- 社内では、彼女はおべっか使いだと嫌われている。