「世辞」とは?
「世辞」の意味
「世辞(せじ)」とは、「他人に対する愛想のよい言葉」、「人に気に入られるような上手な口ぶり」、「心にもない褒め言葉」を指す言葉で、「お世辞(おせじ)」と言うこともあります。
「世辞」を「世事(せじ)」と表記することもありますが、「世事(せじ/せいじ)」には、「世の中の事柄。俗事。」という意味もあります。
「世辞」の由来
「世」は、音読みでは「セ・セイ」、訓読みでは「よ」と読み、「世の中」や「社会」を表しています。
一方、「辞」は、音読みでは「ジ」、訓読みでは「や(める)・ことば・ことわ(る)」と読み、「ことば」や「文章」や「告げる」という意味です。
「世辞」とは、「世の中を渡っていくための辞」、つまり「言葉によって世の中を上手に渡っていくこと」に由来する言葉だと言われています。
「世辞」の使い方・慣用表現
「お世辞を言う」
よく使われるのが「お世辞を言う」という表現です。「お世辞をつかう」「お世辞を語る」とは言いません。
また、「お世辞を申し上げます」という謙譲語は使いませんが、後述する「お世辞が上手」というニュアンスで、世辞を言われた人が「お世辞をおっしゃる」と尊敬表現をすることはあります。
【例文】
- 世辞を言って近づいてくる人は信用できない。
- 「お世辞を言っても何も出ませんよ。」(→褒めても便宜は計りませんよ。)
「お世辞が上手」
「お世辞が上手」とは、会話の中で、褒められた側の人が謙遜して「本当は褒めるほどでもないのに、気を遣って褒めてくれてるんでしょう?」、「いやいや、そんなことないですよ」というニュアンスで使われる、感謝の気持ちを含んだ言い回しです。
【例文】
- 「お召し物がとてもお似合いです。」「お世辞がお上手ですね。」
「お世辞抜き」
「お世辞抜き」とは、「世辞ではなくて本心から」、「本当に」という意味で使われる表現です。もし「お世辞抜きで〜」と褒められることがあったら、素直にお礼を言いましょう。
【例文】
- 「お世辞抜きに素晴らしい仕事ぶりだったよ。」
- 彼女はお世辞抜きに優秀だ。
「お世辞でも嬉しい」
「お世辞でも嬉しい」とは、「気を使って褒めてくれたのだとしても嬉しいです、ありがとう」という意味で使われる言い回しで、上でご説明した「お世辞が上手」よりも、褒め言葉をまっすぐに受け取るニュアンスがあります。
【例文】
- 「お料理、とても美味しかったです。プロ並みの腕前ですね。」「そんな風に言っていただいて、お世辞でも嬉しいです。」
「お世辞にも言えない」
「○○とはお世辞にも言えない」、「お世辞にも○○とは言えない」とは、「心のない褒め言葉をひねり出そうと思ってもできないほど、○○ではない」、「○○とは程遠い」というニュアンスで、対象にマイナス評価をする時に使います。
【例文】
- 美人とはお世辞にも言えないが、彼女は器量が良くて人気があった。
- 彼はお世辞にも誠実とは言えない人物だった。
「世辞」の類語
①円滑なコミュニケーションのためのお約束
「社交術」、「コミュニケーションを円滑に行うためのお約束」という意味で用いる「世辞」の類語には、次のような言葉があります。
- 外交辞令:相手に好感を抱かせるように、取り繕っていう言葉。
- 社交辞令:付き合いを円滑にするために用いる決まり文句。中身のない空々しい言葉。外交辞令。
②口先で丸め込む
上記よりも「口先で丸め込む」、「聞こえのいいことを言って利益を得る」というニュアンスが強い類語には、次のような言葉があります。
- 軽薄口(けいはくぐち):おせじ。おべっか。追従(ついしょう)。
- 甘口(あまくち):相手の気に入るような聞こえのいい言葉。甘言(かんげん)。
- ヨイショ:相手を持ち上げるために言う心無い褒め言葉。
- リップサービス:耳当たりのいいことを言うこと。または、その言葉。
③ご機嫌をとるための行動
また、「心にもない褒め言葉を言う」以外に、「ご機嫌をとるための行動」も含む類語には、次のような言葉があります。
- 追従(ついしょう):人に媚びへつらうこと。媚びへつらって言う言葉。
- 諂い(へつらい):相手の気に入るようにふるまうこと。媚びること。
- 胡麻すり:自分の利益のためにへつらうこと。人に取り入ること。
- おべっか、おべんちゃら:ご機嫌をとること。ご機嫌をとるために言う言葉。