「おべっか」の意味と使い方
「おべっか」とは、相手に下手(したで)に出て機嫌を取ることや、本心ではないのに相手を喜ばせて上機嫌にさせる言葉のことです。
基本的には立場が上の人に対して、自分の保身や利益のために行われます。相手が困った立場になったり、利益となる関係にならなくなったりすると手のひらを返すように見捨てたり、お付き合いをやめてしまうような人もいるようです。
「おべっかを使う」
「おべっか」は、それ単独でも使われるものの、「おべっかを使う」という表現の仕方をよく見かけます。
「おべっかを使う」人は、本心ではない言葉や振る舞いで相手の機嫌を取るような人ですから、周囲の人からあまり良く思われることがなく、調子の良い人や打算的な人という見方をされることが大半です。
後で誰からも相手にされなくなったり、おべっかを使った相手に捨て駒にされたりすることもあり、おべっかの使い過ぎは、良くない結末を迎えることもあるでしょう。
「おべっか」使用例
- 時代劇の敵役には必ず、私腹を肥やす悪代官とおべっか使いの商人がいる。
- 直属の上司は、社長におべっかを使って部長に昇進したため「仕事ができないくせに」と陰口をきかれている。
- 一線を引いて悠々自適の生活をし出したら、おべっかを使う人がすり寄ってこなくなりすっきりした。
- あんな見え透いたおべっかを真に受ける人はいないだろう。
「おべっか」の語源
「おべっか」の語源は「弁口」(読み:べんこう)だと考えられています。「弁口」は、元々は「口のきき方」という意味のみでしたが、派生して口先が上手いというあまり良くない表現でも使われるようになりました。
「弁」で話し方や話しぶりや話の内容が上手なことを、「口」は言い表し方や表現する言葉を指しています。同じ意味の語句を二つ重ねることで、話の仕方が非常に上手いこと、巧みに相手をその気にさせるのが上手だということを表しているのでしょう。
「弁口」に丁寧さを表す接頭語の「お」が付いて「お弁口」になり、時代が下るにつれて言いやすく「おべっか」に変化したのではないかと言われています。
「おべんちゃら」との語源の違い
「おべっか」に似た言葉に「おべんちゃら」があります。使い方も似ていて、「お世辞を言う」「心にもないいい加減なことを言う」などの意味で用いられます。
この言葉は意外に歴史が新しく、元々は江戸時代より京都で使われていた「べんちゃら」に、明治期に入ってから丁寧を表す接頭語の「お」を付けて使われるようになりました。
「べんちゃら」の「べん」は「おべっか」と同様に「弁」を表していて、「話が上手い」ことをいいます。では「ちゃら」はどのような意味でしょうか。
「ちゃら」は現代では「チャラ男」や「チャラい」などのように使われていて、「いい加減で軽い感じ」を示しています。話が上手でうまくあしらいながら、適当に相手が喜ぶことを言う、という意味合いですね。
【使用例】
- 「綺麗だね」とおべんちゃらを言ったって、本気にしませんよ。
- どの女性にも「キミ、可愛いねー!」。さすがチャラ男!おべんちゃらだと分かっていても、みんな楽しそうに笑っているよ。
「おべっか」の類語
「おべっか」の類語と用例を簡単に紹介します。
【類語の例】
- 追従(ついしょう)…相手に気に入られるよう卑下して振る舞うこと。「お追従」で皮肉の気持ちを込められる。「お追従を言って客を喜ばせる。」
- へつらう…相手の機嫌を取るように下手(したで)に出る行動をすること。「本意ではないが、上司にへつらって愛想笑いを浮かべる。」
- 迎合(げいごう)…本音は違っても、表向きは態度や考えを変えたふりをして相手に調子を合わせていること。「権力者の考え方に迎合してやり過ごす。」
- ごまをする…自分の利益のために他者の機嫌を取ること。「受注のため得意先にごまをする。」
「おべっか」の反対語
「おべっか」と反対の意味である言葉を紹介します。
【反対語の例】
- 歯に衣着せぬ(はにきぬきせぬ)…本音を包み隠さず厳しく言うこと。「上司にも歯に衣着せぬ意見をする。」
- ずけずけとした物言い…遠慮無しにはっきりと発言すること。「ずけずけとした物言いで相手に煙たがられる。」