「朝凪」の意味
「朝凪(あさなぎ)」とは、朝の時間帯の陸風(りくふう)と海風(かいふう)が入れ替わるときに、海辺の風が一時的に吹かなくなることです。
海岸や海に近い地域で、夜間に陸地から海上に向かって吹く風のことを「陸風」と言います。一方「海風」は、陸風とは逆に、昼間、海上から陸地に向かって吹く風のことです。
「朝凪」が起こるのはなぜ?
陸風と海風が入れ替わることで起こる「朝凪」ですが、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?「朝凪」が起こるのには、海上と陸地の温度の変化が関係しています。
海上と陸地の一日の温度の変化を見てみると、海水面の温度はあまり変化しません。しかし陸地では、太陽熱の影響で温度が昼間は高く、夜間は低くなります。そのため、昼間は陸地の気圧が低くなり、気圧の高い海上から気圧の低い陸地に向かって風が吹きます。
これが「海風」です。逆に夜間になると、陸地の温度が低くなるため、陸地から海上へと「陸風」が吹くようになります。こうした「陸風」と「海風」の入れ替わりによって、風が吹かなくなる瞬間が生じ、「朝凪」が起こります。
「朝凪」の使い方
例文
- 私は朝凪の起こるこの時間帯が好きだ。
- 海のないところで育った私は、朝凪を初めて体験したときにちょっとした感動を覚えた。
- 朝凪のときの海はとても静かだ。
「朝凪」の対義語:「夕凪(ゆうなぎ)」
朝、陸風が海風に入れ替わるのが「朝凪」ですが、逆に、海風が陸風に入れ替わるタイミングというのもあります。それを「夕凪(ゆうなぎ)」と言い、「朝凪」の対義語とされています。
「夕凪」は、昼間の海風が、夜間の陸風へと変化するときに起こる一時的な無風状態です。そのため、海風や陸風が発達しやすい夏の夕凪は、海風が止むことで体感温度が高くなってしまい、とても蒸し暑く感じることが多いようです。
【例文】
- そろそろ夕凪が起こる頃だろう。
- 夕凪のせいで、急に暑くなってきた。
「凪」とは?
「朝凪」の「凪(なぎ)」とは、風が一時的にやんでいる状態のことです。「凪」が起こっているときには海の波も穏やかになるため、風がやんで波が穏やかになることを指して「凪」とも言います。
ですが、このような「凪」の状態が見られるのは、海辺だけではありません。山間部でも「凪」という現象は起こります。
山間部では、昼間は平地から谷の奥に向かって谷風(たにかぜ)が吹き、夜間は谷の奥から平地に向かって山風(やまかぜ)が吹きます。山間部でも海辺と同様に、朝晩に谷風と山風の入れ替わりが起こり、こちらも「朝凪」「夕凪」と呼ばれます。
「凪」の対義語:「時化(しけ)」
「凪」の反対の意味を表す言葉は「時化(しけ)」です。「時化」には、悪天候によって海が荒れることという意味があります。大気の状態などの気象現象を研究する気象学という学問においては、波の高さが4メートルを超えると「時化」とされるようです。
また「時化」は、悪天候によって波が荒れて魚がとれないことも表し、転じて、興行などの客入りや商品の売れ行きが悪いことといった意味でも使われます。「時化る(しける)」といったかたちで、動詞として使われることも多いです。
【例文】
- せっかく旅行に来たのに、運悪く時化に遭ってしまい、海に行くことが出来ない。
- このところ時化が続いているため、漁に出られない。
- 思っていたよりも今回の公演の客の入りが悪く時化ている。
「凪」を表す他の言葉
ここからは、「凪」を表す他の表現についても見てみましょう。「凪」を用いた表現ですから、波が静かになって穏やかな状態を表す言葉ばかりです。
【べた凪】
「べた凪」は、まったく風が吹かなくなって、海面に波がなく静かな状態のことです。
【油凪(あぶらなぎ)】
まるで油を流したかのように、海面に波が立たずに平らな様子のことを「油凪」と言います。これも「べた凪」と言い、また「光り凪」とも言います。
【夜凪(よなぎ)】
「夜凪」とは、夜間、海上の風が止んで波が静かになり、海が穏やかになることです。
【小春凪(こはるなぎ)】
「小春凪」は、冬の初めの頃に現れる、穏やかな海の凪のことを指した表現です。ちなみに「小春」とは、陰暦10月のことですが、この頃は春に似た暖かな晴天が多く見られることに由来します。
【冬凪(ふゆなぎ)】
風が強く波が荒れることが多い冬ですが、風が一時的に止むこともあります。それによって、波が静かになり、海が穏やかになることを「冬凪」と言います。