「穏やか」とは
「穏やか(おだやか)」とは、人や物事の性質や状態などを表す形容動詞で、以下の意味があります。
- 静かで変化もなくのどかな様子(例:穏やかな波)
- 落ち着いて物静かな様子。温和な様子(例:穏やかな人柄)
- 意見や方法、態度などが激しくなく、穏当な様子(例:穏やかな解決方法)
「穏」の字義
「穏」は、音読みが「オン」、訓読みが「おだ-やか。やす-らか」で、意味もおだやか、やすらか、ゆったりした様子というものです。
「穏」は、作物を表す「禾」と右側の「かくす。かくれる」という意味の「隠(イン)」の原字で成り立ち、作物を隠すこと、中に入れて外に出さないことを意味しています。
ここから派生して、上記のような「感情の起伏や物事の中が表に現われない、落ち着いた様子」を意味するようになりました。
「穏やか」の使い方
1の意味の「穏やか」
- 浜辺でこの穏やかな春の海を見ていると、「春の海、終日(ひねもす)のたり、のたりかな」と詠んだ蕪村(ぶそん)の気持ちがわかるような気がする。
- 台風が去って、ようやく穏やかな秋が訪れた。空高く雲が浮かんでいるこの晴天の景色を見上げるとストレスなんか吹っ飛んでしまうようだ。
- ここ数日、過ごしやすい穏やかな天気が続いています。
2の意味の「穏やか」
- 彼は、どんな時でも落ち着いた穏やかな声で話すので、周りの者に安心感を与えてくれる。
- 彼女のやさしく穏やかな表情は、ラファエロの聖母マリアによく似ている。
- ぽかぽか陽気のベランダで猫が穏やかに昼寝をしている。
3の意味の「穏やか」
- マンションの居住者たちが口論を始めたので、管理会社の担当者と理事長が中に入って、もっと穏やかに話し合いをするように仲裁した。
- 気に入らない人にはすぐ暴言を吐く。君の態度は穏やかじゃないね。
- 友人夫婦が離婚の裁判で争い、お互いを激しく非難しあっていると聞いて、もっと穏やかな方法がなかったのかと他人事ながら心配している。
「穏やか」の類語
「温和」
「温和(おんわ)」は、「穏やか」とほとんど同じ意味の言葉です。「温和」には、気候が温暖で、寒暖の差があまりないという物理的な条件が入っている場合もある点が「穏やか」と異なるところです。
【例文】
- 瀬戸内の温和な気候は、病弱な子供たちの健康にいいと主治医から勧められて移住することにした。
- 祖父は、いつもにこにこしていて温和な性格なので、近所の人たちから慕われている。
- 「この記事はちょっと過激だね。もう少し温和な表現に直したらどうだい」と編集長に注意された。
「温厚」
「温厚(おんこう)」は、性質が穏やかで優しいこと、誠実で真面目な様子といった意味の言葉です。
【例文】
- 目撃者の話では、その男性は身なりもよく温厚な紳士を思わせるような雰囲気だったと証言している。
- 若いとき激しい気性だった彼は、年齢を重ねるにしたがって温厚な性格に変化してきた。
「穏便」
「穏便(おんびん)」には、物事を穏やかに処理したり、そういう人の態度や様子、あるいは表に出ないように内々で処理するという意味があります。「穏便」は、「穏やか」の3の意味での類語と言えるでしょう。
また、古典などでは、手軽なこと、便利なこと、都合がよいことなどの意味で使われていますが、現在はそのような意味で使うことは稀です。
【例文】
- 上司が不祥事を穏便に処理しようとしたことが内部告発で世間に知れて、マスコミから激しく叩かれた。
- 立てこもり事件で、穏便な人質の解放を最優先する警察は、報道規制の約束をメディア各社から取り付けた。
「長閑」
「長閑(のどか)」は、静かで穏やかな様子、心配事がないこと、のんきなこと、天気が穏やかなことなどを意味しています。この言葉も「穏やか」とおおよそ同じ意味を持った言葉で、使う場面によってはそのまま置き換えることもできます。
【例文】
- 定年退職して田舎に移住し、晴耕雨読の長閑な生活が理想だ。
- 長閑な小春日和の縁側で猫と一緒に昼寝を楽しんだ。
- 観光客であふれていた町が、外出自粛のために閑静で長閑な観光地に戻った。