「弊害」の意味とは
「弊害(へいがい)」とは、ある物事を続けることで発生する悪いこと、他に害を及ぼす悪い影響のことです。
多くの物事は、正しいこと・良いこと・役に立つこと、といったポジティブな面と、間違ったこと・悪いこと・害になること、といったネガティブな面を持ち合わせているでしょう。
ある視点からは、その物事の良い側面だけが映るかもしれません。しかし、異なる視点から長期的に見た場合、良くない部分が見えてきたり、悪い影響を受けてしまったりすることもあるでしょう。これを「弊害」と呼びます。
「弊」も「害」も、どちらも、よくない、好ましくないという意味がありますが、詳しくは次項で解説します。
「弊」「害」の字義
「弊」には次のような意味があります。
- よくない、つかれる、たるむ(ゆるむ)ことで害になる(弊害、旧弊)
- やぶる、やぶれる、ぼろぼろになる(弊衣)
- つかれる、よわる、たおれる(疲弊)
- 自分に関するものにつけて、謙遜の気持ちを表す(弊社)
「害」の意味は以下の3つです。
- さまたげる(障害・妨害)や
- わざわい災難(水害・公害)
- そこなう、傷つける、こわす(害悪・傷害)
「弊害」は、「弊」の1の意味と、「害」の1と2の意味を組み合わせて成り立っていると言えるでしょう。
「弊害」の使い方
上述の通り、「弊害」には、「ある物事を続けることで発生する」というニュアンスも含まれています。物事のメリットや良い点を挙げた上で、ネガティブな側面を「弊害」として述べることも多くあります。
例文
- スマホはとても便利なツールだが、使いすぎは心身両面で多くの弊害があると指摘されている。
- 終身雇用制には、雇用の安定や長期的な人材育成という利点があるが、労働者の意欲低下や人件費の調整、人材の流動性に欠けるという弊害もある。
- 飲酒は、適量であれば心身の健康に良いと言えるが、量を過ごすと心身を蝕(むしば)む毒になる弊害を伴っている。
- 政権の長期化には、首相の独裁色が強まり、自由闊達(かったつ)な政策論議ができなくなるという弊害があると言われている。
「弊害」の類語
「不都合」
「不都合(ふつごう)」は、「弊害」の類語としては、道理に合わないこと、よくないことという意味です。ほかには、貧しいこと、生活が苦しいことや都合が悪いことといった意味も持っています。
【例文】
- 彼の取引先に対する姿勢は、不都合な態度だな。
- 息子が万引きで補導されるなんて、警察官の父親は、息子が不都合なことをしてくれたと思っているだろうな。
「支障」
「支障(ししょう)」は、物事の妨げとなることです。「支障」は、単に妨げになる、遮(さえぎ)るという意味だけで、「弊害」のように、悪い、よくないという意味は含んでいません。なお、妨げ、遮るという意味では「障害」も同様です。
【例文】
- 天気予報では、大会当日は荒れるらしい。競技進行の支障にならなければいいのだが。
- 会社のサーバーがウイルス感染して、仕事に支障が出ているため、納期に間に合いそうにない。
「弊」を使った言葉
【旧弊(きゅうへい)】
古くから守られてきた習慣やしきたり。時代や社会の価値観などの変化になじまないものも多くあり、そのようなものを旧弊と言って否定的に使われることもあります。明らかに悪いと言われる習慣やしきたりは、次の悪弊です。
【悪弊(あくへい)】
昔から伝わっている悪い習慣やしきたり。時代に合わない悪いことで、やめようと思ってもなかなか個人の力ではどうにもならない社会的な習慣などを指します。
【語弊(ごへい)】
言葉の使い方が不適切なために、相手に誤解や不快感を与えるような言葉や表現。自分と相手との間で物事に対する認識や理解が異なっているような場合に、「こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが」と一言断って話を続けるようなときに使われます。
間違いやすい「弊」と「幣」
「弊」と「幣」は、よく間違われます。「幣」は、紙幣や貨幣のようにお金を意味するほか、ぬさ(神前に捧げる布)や宝物といった意味もあります。
それぞれの漢字の上部にある「敝」は、布を割いて駄目にすることを意味します。また、「弊」の下の「廾」は両手を、「幣」の下の「巾」は、布を表しています。「弊」は、両手で布を割いて駄目にすることを強調し、「幣」は、布を切り分けることを表します。
二つの紛らわしい漢字の覚え方として、「紙幣は布きれ(巾)、やぶるは両手(廾)」といったものがあります。