「要望」とは?
「要望」は、(ようぼう)と読みます。2つの漢字を見るだけで、意味の類推ができることでしょう。「要」は、多義的な字ですが、「要望」においては「いる、入り用である、もとめる」という意味。「望」は、「要望」においては「のぞむ」の意味で使われます。
「要望」は、この字義そのままに、相手に対し物事の実現を強く望むことを意味する言葉です。
「要」には、「かなめ、大切な部分」という字義もありますが、この意味から「要望」が「大切な願い」「強く求める」というニュアンスをもつに至ったという説もあります。
「要望」の使い方
「要望」は、自分が主体となって用いるよりも、相手が自分に対して望むことを尋ねるようなケースで用いることが圧倒的に多い言葉です。目上やビジネスシーンで用いる場合は、尊敬の「ご(御)」をつけて「ご要望」として使うことが殆どです。
自分が相手に求める場合は、「要望がございます」などのように用います。文法として誤りではないのですが、不躾な感が否めないため、「お願いがございます」などの柔らかな表現のほうが無難です。
また、うっかり「ご要望」と「ご」をつけがちですが、自分に尊敬語を使うことになってしまいます。このような理由からも、自分主体で使う場合は注意が必要です。
「要望」の定型的言い回し
「要望」には、いくつかの定型的な言い回しがあります。他者に対して尋ねる場合は、わけてもビジネスシーンで頻繁に用いられますので、代表的な二例を挙げておきましょう。
ご要望はございますか?:文頭に「なにか」をつける場合もあります。仕事の取引先などに、率先してこのように尋ねておくと、熱意を評価してもらえることでしょう。
ご要望に沿う(応える):上記の問いに、相手がなんらかの要求をしてきたさいに、「ご要望に沿わせて(応えさせて)頂きます」あるいは、「あいにくご要望に沿う(お応えする)ことができかねます」などと使います。
「要望」の文例
(会社員A)
当社からのご提案は以上でございます。ほかに、なにかご要望がございますでしょうか?
(デザイナーB子)
細かなご要望にも沿わせて頂きながら、最高のウエディングドレスをデザインしたく存じます。
(美容部員C子)
色落ちしない口紅がほしいという消費者さまのご要望の声が高いのを受け、この新製品が開発されました。
(野球部監督D男)
練習メニューに要望があれば、今のうちに意見を言ってくれ。
(コンビニ店主E男)
うちの店でバイトしたいなら、三点ほど要望があるので、最初にそれを確認してください。
「要望」の類語
「要請」
「要請」(ようせい)とは、必要なこととして、実現を強く願い求めること、乞い求めることを意味する言葉です。「要望」よりも、要求を働きかける度合いが強い言葉です。
文例:家賃の支払いが数か月滞ってしまい、大家から立ち退きを要請されてしまった。
「要求」
「要求」(ようきゅう)は、必要なこと、当然のこととして、相手に強く求めることを意味する言葉です。求めるレベルは「要請」よりもさらに強いものとなります。
ビジネスシーンには強すぎる言葉ですので、使うさいには慎重さが必要です。逆に、労組が会社に対して賃金のベースアップを交渉するようなさいには、「要求」はうってつけの言葉です。
文例:販売一課の接待費に私的流用の疑いがあるとして、経理部から利用店や接待企業などの情報提出を要求されてしまった。
「希望」
「希望」(きぼう)は、将来に対する期待や、明るい見通しの意味で使うことが多い言葉ですが、「要望」の類語としては、あることの実現を望み願うこと、の意味で用いられます。
「希望」は、望みや願い、期待というレベルで用いられる言葉ですから、「要望」「要請」「要求」と比べると、求める強さはもっとも軽いものとなります。
文例:ご希望のレストランがありましたら、予約しますのでご遠慮なくおっしゃってくださいね。