「肝心」の意味とは?
「肝心」は、かんじんと読みます。かんしんとも読めますが、一般的ではありません。「かんじん」には「肝腎」という漢字表記もあり、こちらもよく用いられ意味も同じです。「肝」「心」「腎」は、人間の主要な臓器を指しています。
「肝心(肝腎)」は、「肝臓と心臓」「肝臓と腎臓」という物理的な臓器を表す場合もありますが、日本語でもっとも一般的な意味は、とりわけ大切なこと、またそのさま、きわめて重要な箇所、部分、事柄、肝要といったものです。
昔の日本語における用い方では、大事な部分という意味から局所、または心に深く感じること、肝に銘じること、感心・感銘、もしくはとりわけ大切で大事であるさまなども意味していました。
「肝」と「心」の字義
「肝」は、①きも、肝臓、②精神の重要なありかとしてのこころ、③かなめという意味で、身体的に重要な臓器としてのみならず、精神的に重要な心と同一視されています。
「心」は、①こころ、気持ち、精神、②心臓、③まんなか、大事な部分、かなめです。こちらも「肝」と同様に、臓器としても精神的にも重要な役割を意味として持っています。
「肝心」の使い方
「肝」「心」「腎」が、重要な臓器であることから導かれる「肝心(肝腎)」の意味を考えると、そのことが使い方のポイントにも表れています。すなわち、比較対象物中きわめて重要という点です。
対象は、人間に限らず、さまざまな事象も含みます。「肝心」の使い方を「作家A氏の出版記念パーティーに大勢の人がつめかけたが、肝心のA氏が途中から帰ってしまった」という文章で考察してみましょう。
A氏は唯一無二のひとりの存在ですが、パーティーに集った人の中の一人でもあります。しかし、「肝心のA氏」と言う場合は、パーティーの大勢の参加者の中でも、とりわけ重要な主人公たるA氏という意味で「肝心」が使われています。
「肝心」の文例
- 結婚式が無事終わって安堵したのか、二次会では肝心の花婿が酔いつぶれてしまった。
- 履歴書には趣味などを始めいくつかの記入パートがあるが、肝心なのは応募理由の部分だ。
- ソファを選ぶときには、さまざまな角度から考えるが、結局は坐り心地が肝心だ。
「肝心要」について
「肝心要」(かんじんかなめ)という言葉も、よく使わています。「要」は多義的な字ですが、ここでは、かなめ、大切なところという意味で使われています。扇の要(かなめ)から「大切なところ」という意味が派生しています。要が壊れたら、扇はバラバラになり用をなしませんね。
すなわち、「肝心要」は、「肝心」を強調した言葉で、きわめて大切な要点、とりわけ重要であること、特に大切であることを意味しています。
【文例】
- 今回のプロジェクトの各項目のなかで、肝心要なのは顧客ニーズに的を絞った商品の開発だ。
「肝心」の類語
「重要」
「重要」(じゅうよう)の「要」は上述しました。「重」も多義的な字で「重たい」以外に、ここでは、おもんじる、たいせつにするという意味で使われています。べつの用例では「重視」「貴重」などが挙げられます。
「重要」の意味は、物事の根本や本質に大きくかかわっていること、きわめて大事であること、また、そのさまです。「肝心」のような、他と比べてという字義の背景はありませんが、おのずから他よりも大切であるからこその「重要」です。
【文例】
- 会議の時間が限られているので、重要な項目から始めてまいります。
「肝要」
「肝要」(かんよう)は、上述の「肝心要」と同じ意味であり、略されたものとも考えられます。「肝心」のなかでも「要(かなめ)」である「肝要」は、非常に大切なこと、最も大切なことという意味で用いられます。
「肝心」「肝要」は、どちらもほぼ同じ意味として用いられはしますが、「肝心」は、他と比較してきわめて大切、重要、「肝要」は、「肝心」の中で最も重要という違いがあります。
【文例】
- 自由と平等は、民主主義における肝要な権利である。