「不興」とは?
「不興」(ふきょう)とは、「おもしろくないこと」「興(きょう)のわかないこと」という意味の言葉です。「無興」(ぶきょう)ともいい、「不興」にも「ぶきょう」の読みを当てることがあります。
また、上記に加えて「不興」には「主君など目上の人間の機嫌をそこなうこと、咎(とが)めを受けること」という意味もありますので覚えておきましょう。
目上の人間に「おもしろくない(=不興)」と思わせることは無礼であり、すなわちその人物の「機嫌をそこなう」ことに繋がるのです。
「興」とは?
「興」(キョウ、コウ)の字は、「台をかつぎあげる」がもともとの意味と考えられており、ひいて「ひきたてる」「さかんにする」「心にたのしみを感じる」などの意味を持ちます。
「興味」「興行」「興奮」「即興」などなど、たのしさを求め、それをさかんにしていくという意味の熟語は日常でも多く見聞きするのではないでしょうか。
「不興/無興」の場合は「興」を「不/無」で打ち消していますから、かつぎあげられようとした台をわざわざ押さえつけて下ろすような「おもしろくないこと」を表すと解釈できますね。
「不興」の使い方
「不興」という言葉は、何らかの言行や事象が原因となって相手を不機嫌にする、不機嫌にした相手から咎めを受けるさまを指して使います。特に、「(相手の)不興を買う」という慣用表現が知られています。
具体的にどのような言行が「不興」にあたるのか、客観的に明らかな場合もありますが、究極的には相手次第です。特に、大きな権限を持つ人間(主君など)相手の場合は、何もせずとも「不興を買う」事態になってしまうこともありえます。
このように、「不興」は人間の理不尽なふるまいを表すこともある一方で、誰にとっても明らかな「非」が原因である場合も少なくありません。誰からも不興を買わずに生きることは困難ですが、相手の興・不興を境を見極めれば、世渡りが少し上手くいくかもしれません。
例文
- 王の不興を被(こうむ)るのを恐れ、臣下たちはただ平伏するのみだった。
- 私が事態の成り行きを説明している間、父はずっと不興顔だった。
- その社員が考案した奇策はすべて功を奏したが、昔ながらのやり方を好む上司たちからは不興を買っていた。
- 友人らの不興を買っているとも知らずに、彼は自らの悪事を武勇伝のように話して回った。
「不興」の類語
興醒め
「興醒め」(きょうざめ)とは、その字のごとく「興が醒(さ)めること」という意味です。「醒める」は「冷める」にも通じて、心の高ぶりがなくなって平静な状態に戻ることを指します。
かつぎあげられた「興」が、意気を失って消沈するさまを思い浮かべれば、「不興」にかなり近い言葉であることがわかるでしょう。
【例文】:楽しみにしていたデートの約束を反故(ほご)にされて、興醒めだ。
味気ない
「味気ない」(あじけない)とは「面白くない、つまらない」という意味の言葉です。その字の通り「味の気がない」が由来…というわけではなく、もともとは「あじきない」という形容詞であり、「味気」は当て字です。
古語の「あじきない」には「どうにもならない」や「無意味である」といった意味もありますが、「味気ない」とする場合は、上に記した意味として「不興」の類語的に使うことができます。
【例文】:味気ない文章だ。こんなものは誰も楽しめないだろう。
無味乾燥
「無味乾燥」(むみかんそう)とは、こちらは読んで字のごとく「味わいもうるおいもないこと」という意味の言葉です。
石のように味もなければ、砂のように乾ききっている、そのような物事は間違いなく「興」とは言い難く、誰かに差し出せば不興を買ってしまうことでしょう。
【例文】:教科書のテキストは無味乾燥で、漫画のような味わいがない。
「不興」のほかに「買う」もの
「不興を買う」の「買う」は、「何かと引き換えに望みのものを得る」という一般的な意味ではなく、「悪い結果を招く」という意味で使われています。
これと同じ意味で、「不興」のほかに買うものには以下のようなものがあります。
- 顰蹙(ひんしゅく)を買う…不快感を与えるようなことをして嫌われる。
- 恨みを買う…人から恨まれることをする。
- 一笑を買う…笑いものになる。