「唾棄」とは?
「唾棄」は、(だき)と読みます。読んで字のごとく、直接的には「唾を棄てる」という意味になりますが、その行為だけを意味する言葉ではなく、むしろ比喩的に派生した意味のほうが主に用いられます。
「唾棄」という言葉は、唾を吐き捨てること、そこから転じて、対象をきわめて軽蔑して嫌うこと、汚らわしいとして蔑むこと、唾を棄てるように見捨てて顧みないこと、うとんじること、を意味します。
「唾」と「棄」について
「唾棄」の意味をより理解しやすくするために、「唾」と「棄」の漢字の意味をそれぞれ検証していきます。
「唾」は、音読みが(だ)、訓読みが(つば)。意味は、つば、つばき、つばを吐く。蔑んでしりぞける、憎しみうとんじる。「唾」を(だ)と読みづらかったとしても、「唾液」(だえき)という言葉ならばお馴染みですね。
「棄」は、音読みが(き)、訓読みが(す・てる)。意味は、すてる、放り出す、退ける、など。難しい字のようですが、放棄、棄権、廃棄物、など、よく見聞きする言葉に用いられています。
この二つの漢字で構成される「唾棄」は、字そのもののとおりに、(唾を吐きだすように)蔑み、うとんじる、という意味が根幹となります。対象を忌み嫌う、非常に強い非難と嫌悪を感じさせる言葉です。
「唾棄」の使い方
日常生活の中で、誰かが唾を吐き捨てる場面を目撃することは、それほど多くはないですね。現代社会において、唾を吐くことは、それほど荒々しい行為といえます。
「唾棄」という言葉は、その行為がもつ性質からもわかるように、たんに軽蔑する、うとましう思う、というレベルを超えた、きわめて激しい蔑みの言葉ですので、用いるタイミングは慎重に選ぶべきでしょう。
用いられることの多い言い回しとしては、「唾棄すべき」があります。「~を唾棄すべきだ」という形ではなく「唾棄すべき~」のように目的語を修飾するかたちでの用いられる言葉です。
「唾棄」の文例
- 国民のためではなく自らの権力のために政治をする者たちは、唾棄すべき存在だ。
- A専務は、会社の資金を個人流用していたことが明るみに出て、全社員の唾棄の的となった。
- Bさんが会社を頻繁に休むのは持病の悪化によるもので、まわりから唾棄されるいわれはない。
- 他者を唾棄する傾向が強い人物は、自分にコンプレックスを抱えていることが多い。
「唾棄」の類語
「唾棄」はきわめて強い拒否感や嫌悪を表す言葉ですから、類語や似た表現も、最大級の拒否感情を意味する言葉が並びます。
「忌み嫌う」の意味と使い方
「忌み嫌う」は(いみきらう)と読みます。「嫌う」はお馴染みの言葉ですので、「忌み」について解説しましょう。
「忌み」は、動詞「忌む」の連用形です。「忌む」(斎む)のおもな意味は、①崇高なもの、不浄なものなどを人知を超えた神秘として恐れ避けること。②不快なものとして対象を遠ざけること、近づくことを禁忌すること。③汚れとして恨み嫌うことです。
上記のように、もともとは、通常の汚れのレベルを超える不浄さを恐れ避けるという「忌む」。その字と「嫌」で構成される「忌み嫌う」は、まさに「唾棄」の類語たりえ、「ひどく嫌い、うとみ、避けること」という意味を持ちます。
文例:中村さんは、コウモリを邪霊の化身と信じ、とことん忌み嫌っている。
「毛嫌い」の意味と使い方
「毛嫌い」という言葉を使ってはいても、なぜ「毛」がつくのかを考えたことはないかもしれません。鳥獣が、相手をその毛並みによって嫌うことが、この言葉の由来です。
「毛嫌い」は、その由来から派生し、これという明確な理由をもたずに、感情的に相手のことを嫌うことを意味するにいたりました。
文例:直美さんは、バイトの店の店長の佇まいと声質が気に障ると毛嫌いし、一週間で辞めてしまった。