「当てつけ」とは？
「当てつけ」（あてつけ）は、動詞「当てつける」の名詞形で、「当て付け」とも表記します。意味は大きくわけて、次の２つです。
- 相手の気に障るような内容を、他のことにかこつけて表現したり伝えること。あるいは、皮肉やあえて実際とは異なる表現のしかたによって相手を非難すること。
- 男女の親密さを他に見せつけること。
「当てつけ」の心理
動物にも、一部には嫉妬の感情などがあることが知られていますが、複雑な心理がからむ「当てつけ」は、人間特有の行為といえます。「当てつけ」を正しく使いこなすためにも、「当てつけ」がどのような心理を背景とするのかを探ってみましょう。
「当てつけ」は、自分の感情をストレートに相手に伝えられない状況が大前提となります。率直な言葉でコミュニケーションをとりづらい人間関係、あるいは内容において、他のことにかこつけて伝えたい感情は、たいていが不満や嫉妬、報復的なものを含みます。
「当てつけ」が効果的なものとして機能するためには、相手がなにをされたら嫌なのかを熟知する必要があります。したがって、「当てつけ」をする者とされる者の間には、すでに緊密な関係性が構築されていることがほとんどです。
「当てつけ」に至るまでには、愛情や怒り、疑いや嫉妬などがありながら、それらをストレートには伝え難い「近くて遠い」関係性が存在するといえましょう。
「当てつけ」の使い方
「当てつけ」は、上述したように、相手にダメージを与えたり、不安や嫉妬を呼び覚ましたりしてはじめて成立します。
したがって、対象とする相手が自分とある程度の人間関係をもっていなければ、使うことは不自然な表現です。
たとえば、アイドルスターに熱をあげる女性が、そのスターがすべての女性ファンに笑顔を振りまくことに立腹したとします。
そのスターの目前でほかの男性と親しいそぶりを見せつけたとしても、スターにとってはなんの痛手にもなりませんから、その行為を「当てつけ」と表現することはできません。
「当てつけ」の文例
- 麻里さんは、恋人が女友達と映画を観たことに嫉妬し、彼への当てつけで別れた彼氏と飲みにいってしまった。
- 正彦君が不良仲間と夜遊びを重ねるのは、兄ばかりを溺愛する親への当てつけに違いない。
「当てつけ」のもう一つの意味、「男女の仲の良さをみせつける」の文例もひとつ挙げておきます。
- クリスマスパーティーでは、新婚の鈴木夫妻の仲の良さに出席者全員が当てつけられて、まるでウエディングパーティーのような状態だった。
「当てつけ」の類語
「当てこすり」の意味と使い方
「当てこすり」とは、婉曲的になにかにかこつけるような言い方で、相手を非難したり責めたり、あるいはおとしめる感情を遠回しに伝えることです。
「当てつけ」は、言葉によるもの以上に行為によるものが多いのに対し、「当てこすり」は言葉のみによる嫌がらせです。
【文例】田中部長は、痩せ型で声も小さい鈴木課長が後ろにいるのを知りながら、課員たちに「痩せて声の小さい奴にいい仕事ができるわけはない」と鈴木課長への当てこすりを大声で話し続けた。
「嫌み」の意味と使い方
「嫌み」とは、他者に不快感を与えることを目的とした言葉や行い、またはあてつけや皮肉を意味する言葉です。ストレートな抗議や批判ではなく、もってまわったような言い方や皮肉をからめて相手を不快にさせる婉曲的な攻撃手法です。
【文例】A先輩は、表面的には褒めてくれているような言い方で、結局は不満をこめた嫌みを言ってくる。ストレートに非難してくれたほうがよほどましだ。