「当てこすり」の意味
「当てこすり」は悪口の一種といえます。遠回しでそれとなくわかるようにする、何かにかこつけて口にする、という特徴をもったいやがらせの言葉です。
遠回しの批判
「当てこすり」の特徴の一つが、遠回し・婉曲的であることです。遠回しなだけで本人には伝わるような表現を使うのがポイントです。
ストレートな言い方ではないので、そんなつもりではなかった、と逃げる余地があります。あなたの被害妄想、自意識過剰だよ、と開き直ることもできます。
何かにかこつける
もう一つの特徴が何かにかこつける、他のことに関連付けるという方法をとることです。対象となる人や出来事をそのまま取り上げたりせず、間接的に批判します。こうして、別のことを口実にしているので、発言者の体面を保つことができます。
「当てこすり」の使い方
「当てこすり」を使った例文
- 当てこすりを言う人間はどこにでもいるものだ。気にしないことだね。
- 私には当てこすりのように思える。いや、当てこすり以外のなにものであろうか。
- 鈍感な彼女には当てこすりが通じないのであった。
「当てこすり」の具体例
「当てこすり」の具体例を見てみましょう。
- 二重まぶたの先輩が、「まぶたが二重か一重かだけで男の印象、ガラッと変わるらしいね。一重の人、かわいそ~。」と一重まぶたの後輩の前でこれ見よがしに口にする。
- 学歴コンプレックスを抱える上司が、高学歴の部下に聞こえるように「クビになった怨恨で放火した犯人、東大卒だって。学歴高い人って現場では役に立たないって定評があるよね。」と話す。
「当てこすり」と「当てつけ」
「当てこすり」とよく似た言葉に「当てつけ」があります。「当てこすり」が言葉による非難やいやがらせであるのに対し、「当てつけ」は言葉だけでなく、行為や態度も含めたいやがらせです。
例を挙げてみましょう。彼氏が他の女性と楽し気に話しているので、彼女の方も当てつけに別の男性と腕を組んだり踊ったりしてみる。太った先輩への当てつけにダイエットする。離婚した上司への当てつけに目に見えるようにいちゃつく。
このような仕返しやいやがらせの行動を指します。「倍返し」まではいきませんが「ざまあみろ」くらいの意趣返しです。
「当てこすり」と「皮肉」
「皮肉」も「当てこすり」と同じく遠回しに相手を批判することですが、大きな違いは批判する方法です。
他の人や事件などにかこつけて批判や非難をする「当てこすり」に対し、「皮肉」は事実とは逆のこと、本心とは異なることを言うという方法をとります。
例えば、仕事をさぼっている人に「お仕事お疲れ様」と声をかける。うるさいくらいに盛り上がっている集団に「にぎやかで結構」、宴会や接待ばかりの夫に「仕事で忙しいのね」など。日常生活でも頻繁にみられるでしょう。
「皮肉」はよく「ユーモア」とも対比されます。どちらも婉曲的に笑いを誘う表現ですね。攻撃されていると感じなければ「皮肉」も「ユーモア」となるでしょう。
「当てこすり」を英語で
「当てこすり」に該当する英語は複数あります。その代表的なものは、「irony」「sarcasm」「satire」「insinuation」などでしょうか。
「当てこすり」の訳に最も近いのは「insinuation」です。事実だけれど不愉快な事柄をそれとなく伝えるという意味です。
「satire」は日本語でいうと「風刺」に当たります。政府や社会批判のための文学や芸術です。
「irony」は「アイロニーとユーモアは本質的に同じ」と言われるように、はたから見て笑える、コメディ要素があります。それに対して「sarcasm」は意地が悪いいやがらせの言葉です。あざけりやからかいに近い笑いとも言えます。