「則り」の意味
「則り」は、<のっとり>と読みます。なお、「乗っ取り」はまったく別の言葉ですので、混同と誤変換にはご注意ください。
動詞「則る」(のっとる)の連用形が「則り」であり、その意味は「規範としてならい~」「標準として守るべき事柄にしたがい~」です。
「則」の字義
「則」(ソク、のり)の字は、古くは「𠟭」と書き、「鼎」(かなえ:食物を煮る容器。祭祀や宝器としても使用される)と「刀」とから成ります。
字義は諸説あり、鼎に刀で傷をつけ「標準、きまり」を表す説、食事の用意をする際には刀を横に置くことで「場のきまりにしたがう(のっとる)」意を表す説があります。
「規則」「法則」「原則」などのように、「則」の字は「きまり、模範、制度、手本、標準」を表す言葉に多くみることができますね。「則る(則り)」とする場合は、そうしたきまりや、それに従うさまをイメージするとよいでしょう。
「則り」の使い方
「則り」は、「計画に則り~する」「伝統に則り~する」などのように、何らかの「決まりがあるもの(法則・規則・様式など)」にしたがって何かをする、という文脈で使うのが基本です。
「規則に則り~する」などの場合、「則」が連続してしまい重複表現のようにも感じられますが、使い方としては問題ありません。
則る対象となるものは、法律や社規のように厳格性のあるものから、「個人的な考えに則り、行動する」のように比較的小規模で主観的なものにまで使用可能です。
例文
- 「我々は、スポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うことを誓います」(※スポーツ大会などの選手宣誓でよく使われる表現)
- プレイヤーAの違反は意図せず発生したものだったが、ゲームのルールに則り、ジャッジは彼を反則負けとする裁定を下した。
- 検察庁は、〇〇法第〇〇条に則り、特別調査委員会の設立を求めた。
「則り」の同義語
「拠り」
「拠り」(より:終止形「拠る」)は、「何らかのよりどころにならって(したがって)~」という意味の言葉です。「依り」と書かれることもあります。
主に、根拠となるきまりごとを示し、手段としてそれにならうさまを表します。ひらがなで「より」と書かれることが多く、しばしば原因・理由などを表す「因り・由り」(より)とニュアンスが混ざることがあります。
例えば「武力により、紛争を解決する」や「雨により、電車が遅れる」と言う場合の「より」は、「則り」の同義語とは言えなくなりますのでご注意ください。
【例文】
- 当社の規定に拠り、チケットのご返金には応じられません。
「準じ」「準拠し」
「準じ」(じゅんじ:終止形「準じる」「準ずる」)は、「手本となる何かにならい~」という意味の言葉です。「准じ」としても同じ意味です。
また、「準拠(じゅんきょ)し」という言い方でも同じ意味を表せますので、合わせて覚えておきましょう。
【例文】
- 映画版のキャストは、原作小説の設定に準じ、全員アジア人が選出された。
- 学習指導要領に準拠し、授業の内容を決定する。
「基づき」
「基づき」(もとづき:終止形「基づく」)は、「基礎にして~」「基として~」「よりどころとして~」という意味の言葉です。
使い方としては「拠り」と同じく、何らかの根拠となる考え方について使います。
【例文】
- 〇〇市の開発計画に基づき、新しい道路が建設中だ。
「則し」
「則し」(そくし:終止形「則する」)は、「則る」と同じく、「あるものを基準とし、それにしたがい~」という意味の言葉です。
一点のみ、「即し」(即する)としないようにご注意ください。「即し」は、「ぴったりとくっつく、即応する」という意味であり、「則し」とは使い方が異なります。
【例文】
- 前例に則し、彼の処分を決定する。