「機微」とは?意味や使い方をご紹介

「機微」という言葉を知らない場合、漢字二文字から意味を推測することさえ難しいかもしれません。心や事物の密かで微妙な働きなどを表す言葉ですが、その意味には感覚的な部分も多く、まさに微妙です。今回は「機微」の意味と使い方を多方面からご紹介します。

目次

  1. 「機微」とは?
  2. 「機微」の使い方
  3. 「機微情報」について

「機微」とは?

「機微」は、(きび)と読みます。表面には見えてこない、あるいは分かりにくい微かなしるし表面からはわかりにくい微妙な物事のおもむき、心の動き、などを意味する言葉です。

感覚的な言葉が並ぶこの定義は、曖昧で、それこそ微妙ですね。ただ、自分の心もようを振り返れば、わかりやすいかもしれません。

人への思いひとつとっても、他者と表面的に笑顔で会話しつつ、もやもやと割り切れない思いを抱いていることもありますね。そのような、明確に表現ができない、表出することのない曖昧な感情や物事は、けっこう身近にあるのではないでしょうか。

「機」と「微」の漢字について

「機」の音読みは()、訓読みは(はた)。多義的な字で、7つほどの意味があります。「機微」の「機」は、心や物事のはたらき、という意味で用いられています。

「微」の音読みは()、訓読みは(かすか)。やはり多義的ですが、基本的には「ごく小さい」ことを表します。①微か、僅か②きわめて小さい、非常に細かい、弱いひそか、ひそかに、などが「機微」の「微」の意味です。

したがって、「機」と「微」で構成される「機微」は、ひそかに、わずかに存在する心や物事のはたらき、という意味をもつのです。

「機微」の使い方

上で紹介した「機微」の意味は、あくまで辞書的な定義です。実際に会話や文章で使われるとき、「機微」にはもう少し奥行きの深い意味が含まれることがあります。

まず、ニュアンスとして強めに含まれる意味が「揺れ動き」「変化」です。辞書では、心や物事の趣き、働き、というかたちで定義されていますが、実際に使われる場合は「変化」に重点が置かれるケースが多く見られます。

「人の心(感情、心)の機微」という場合は、変化のニュアンスが強いです。人生の機微、と使われる場合は、変化よりは、明瞭に表立たずともさまざまに生まれる人生の微妙な趣きや事情、を意味します。

物事について用いられる「機微」も、状況や物事の変化を表す言葉としてケースが多い言葉です。社会、経済、その他さまざまな事例の変化を「機微」で表すことができます。

「機微」の定型的な言い回し

「機微」には、定型的な言い回しがいくつか存在します。その何例かを挙げておきましょう。「機微」という言葉の使い方としては上級編、とでもいえそうな慣用句です。

  • 機微に聡(さと)い:心や事物の機微を感じ取る感覚がすぐれていること、人の心の奥の感情なども的確にキャッチする、などの意味です。
  • 機微を穿(うが)つ:他者の密かな感情や物事の変化、奥深くにひそむものを、はっきりと言葉として発することです。
  • 機微を捉(とら)える:他者の感情や物事の変化の瞬間、その状況を的確に察知し、捉えることです。

「機微」の文例

  • 優れた古典落語は、実にたくみに人情の機微をとらえたものが多い。
  • 心の機微に聡いと、他者を思いやるあまり、自身の行動が控えめになってしまうこともある。
  • A氏は艱難辛苦の年月を歩んだそうだが、それだけ人生の機微に通じ、深い人格を感じさせる。
  • むやみに人の心の機微を穿つものではない。誰でも他者に話したくないことはあるのだから。
  • 社会や経済の機微を捉えることにたけた人物は、リーダーとしての素質が充分にある。

「機微情報」について

これまでにご紹介した「機微」の意味や使い方とは異なりますが、情報社会の現代で覚えておくべき言葉が「機微情報」です。

「機微情報」とは、端的に言えば、取扱注意の情報、という意味です。個人情報の保護が定着してきた昨今ですが、わけても、他者に公表する類ではないとされる情報がいくつかあります。

その代表的なものとしては、差別につながる情報、宗教や思想についての情報、病歴など健康についての情報、政治的活動など特殊な諸経歴の情報、前科などの犯歴、などを挙げることができます。

基本的に、このような機微情報を本人の承諾なしに他者が公表することは、つつしむべき行為であるとされています。


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